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「な、なななんで僕が失格なんだよお!」
「俺に発疹ができたからだろ」
「ふ、ふざけんなよお! そ、それのどこが『負傷』なんだよ!」
「いや、お前がふざけんなよ。俺をこんな目にあわせやがって」
取り乱したアキバ系が、俺に向かって突進してきた。
「よ、よこせ! そ、それは僕のものなんだよ!」
そう言いながら、俺の手の中にある赤い小箱を奪おうとする。
「やめろ!」
「こ、これは! あ、ああ茜ちゃんのチョコは僕のものだあっ……! ぼ、僕の下駄箱に入ってたんだあっ!」
「いや、俺の下駄箱に入ってたわ! どう考えても俺だろうが!」
ここまで言っても、アキバ系はめげない。箱から手を離すことなく、グイグイと引き寄せようとする。
「い、いや! あ、ああ茜ちゃんは僕にチョコをくれるって言ってた! だ、だから僕のだ!」
「勘違いも甚だしいわボケ! さっさと退場しろよ!」
このままだと箱が真っ二つになる。
そう危惧した瞬間だった。
「はーい、時間切れー! 『退場』の時間でぇす」
甘ったるい声と共に、アキバ系の体が金色に輝きだす。
「い、嫌だああっ! し、死にたくないいっ!」
悲鳴をあげる奴の背後で、真っ赤なワンピースに身を包んだ美女が微笑んでいる。ってアキバ、まだチョコを離さないのかよ!
「もーう、達者クンは諦めが悪いなあ。そんなだから、女子から嫌われちゃうんだぞぉ~?」
彼女はプウッと頬を膨らませて、怒るような仕草を見せた。
「そんなキミは、この世界にはふさわしくありませんっ! 消えてくださぁい」
「い、嫌だあぁ!! あ、茜ちゃん……ッ」
アキバ系は金色の光に包まれると、キラキラと輝きながら空気に溶けていった。
「達者でな〜」
さっき散々に名前をいじられた分、こっちも言わせてもらったぜ。というか、二度と戻ってくるなよアキバ野郎。
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