誰の目にも輝きを

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「え、んじゃ、弥伊子、芦屋恭子にメイクされたの?」 真澄が駅から校舎までの坂道で跳ねるように驚いた。 「うん、髪型も、ね。いじられた」 「まじで!?いくらとられたの?」 「いや、初回サービスだって」 「へえ、うらやましい。私だって噂とばかにしつつ、やってもらいたかったりする乙女心は持ち合わせてるのよ」 「南洞さんのメイク姿、見てみたかったなあ」 「割り込んでくるなよ藤田。それに私はスルーかよ」 真澄が藤田飛鳥を小脇に挟んで、またあたまをわしわしとつかんで動かした。藤田飛鳥の髪は朝からかなり乱れてしまっていた。 「私はもう、こりごりだよ」 そう言った弥伊子の内心に、反対の感情もあることにも自分で気づいていた。 「おっと危ない」 真澄が弥伊子の手を引っ張り車道から遠ざけた。隣をいかにも高そうな車が通りすぎた。 「ありがとう、真澄」 一連の動きを見ていた藤田飛鳥が腕を掴むジェスチャーをしながら悔しそうな表情を浮かべた。 「あんな車、どこの誰だろう」 すると、その車は校舎の校門前で停車した。 「どこの誰って、あんなの一人しかいないでしょう」 「真澄、知ってるの?」 「あれは僕も知ってるよ」 弥伊子は藤田飛鳥を振り返った。 「獅童宰都くんだね。ご両親がお酒の貿易をされてるらしい」 「今からもう、親の仕事の手伝いとかで時々休学してる」 「なにそれ」 「世界では大学に行くのは勉強したい学生だけで、仕事が決まっているものが目指すものではない」 真澄が変に声を低くして話した。 「どうしちゃったの?」 「ああ、彼のお父さんがね、保護者会で言ったらしいんだよ。南洞さんのお母さんはお仕事で参加できてなかったのかも」 「そんな両親なのに、勉強と両立するって、進学も併せて目指してるらしいね。住む世界が違うわ」 「なんでそんな人が公立に通ってるの?」 「それは、やっぱりご両親的にはあまり勉強に重きを置いてないとかなんじゃない?単位も大変らしい。高校生で単位がピンチっていうのも珍しいけど」 高級車のドアが開いた。中からでてきた獅童宰都の姿に弥伊子は驚いた。彼は、彼こそは。 「それでもって、あの容姿だもの。天は二物をどころか、どこまでもって感じ。弥伊子の君もどんな奴だか知らないけど、あそこまで住む世界が違っちゃうとお話にならないわよ」 「あ、あの」 弥伊子は言葉にならず地団駄を踏む。 「どうしたの南洞さん」 「あの、彼なの」 「え?」 「図書室で会った彼なの」 「ええ!?」 真澄と藤田飛鳥の声が重なった。 「そうか、休学していたから、でも」 藤田飛鳥は狼狽している。 「あんた、悪いことは言わないよ」 真澄が弥伊子の肩に手を置いた。
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