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★ ★ ★
「ううん~」
「起こしてしまったか。申し訳ない」
「あっ、起きたんですね。どこか苦しいところとか、痛いところとこかありますか?」
クリッとしたグレーの目。その目でジッと見つめられると、黒豹は不思議な感じがした。心内をスッと見透かされているようで、嘘が吐けない感じがする。
「ああ、大丈夫だ。君が手当てをしてくれたのか?」
「はい。薬草を採りに来たんですけど、川に入ったまま倒れていたので。それにケガもしてました。本当は家まで連れて行ってあげたかったけど、僕には抱えられなかったから。ごめんなさい。寒くないですか?」
大きな目が一生懸命に話す。
「ああ、寒くない。ありがとう」
「歩けますか?」
「ゆっくりなら歩けそうだ」
「じゃあ、家まで一緒に。そうだ、お名前聞いてもいいですか?僕はアーレ」
「俺はクラシャスだ。黒豹だ」
「黒豹さん。毛が艶々してて素敵ですね。僕はウサギです」
アーレは優しく微笑むと、カゴから水を出し、クラシャスに渡した。
「お水、飲んだ方がいいです」
クラシャスは渡された水を受け取り、ゆっくりと飲んだ。
「美味いな」
クラシャスは、自分の国の水よりも良い水を飲んだのはいつぶりだろうと思い出そうとするが、子どもの頃に飲んだことしか思い出さなかった。
「この国のお水は、この森の木々に守られているから」
「そうか。しかし、本当に美味い」
普段から飲んでいるアーレには『美味しくない水』がわからなかった。でも、自分の住んでいる国の水を褒められて嬉しかった。
「ありがとう。お水の代わりに僕がお礼を言いますね」
嬉しそうにお礼を言うアーレが天使のように見える。クラシャスは、この感情に戸惑っていた。
そんなクラシャスの気持ちを知らないアーレは、クラシャスが水を飲んでから少し様子を見て、大丈夫そうだったので、クラシャスを支えながら家へと歩き出した。
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