A面:先輩くんサイド

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A面:先輩くんサイド

―「部長   『ファーストキスの味が甘酸っぱい』っていうのは   本当なんでしょうか?」 科学部の部室で 普段物静かな後輩ちゃん が いきなりこんなことを言い出したから 僕は少し戸惑ってしまった しかし一方で 以前にも彼女とは どこかで(・・・・・・・・ ・・・・) こんな やり取り をしたような(・・・ ・・・・ ・・・・・・) そんな奇妙な感覚を覚えた (…いや  気のせいかな?) と 僕は そのことに対して 深く考えるのを やめ 後輩ちゃんの質問に答える 「さぁ  僕はキスすらしたことない(・・・・・・・・・・)から  分かんないや」 「…そうですか―」 そう言って椅子から立ち上がった彼女は 僕に近づくと おもむろにキスをした 僕は突然のことで 頭の中が真っ白になった そんな僕のことなど お構いなしに 後輩ちゃんが尋ねて来る 「どうでしたか?先輩」 「えっ…⁉はっ…⁉なっ…何がっ…?」 「キスですよ  甘酸っぱかったですか?」 「あっ…!?えっ…とっ…そのっ…えっとっ…」 僕はパニック状態の頭で 必死にキスの感想を考える そして やっと出たのが 「…あっ…味の薄いっ…  桃ゼリーみたいな味っ…  だっ…た…かなっ…?」 という 自分でも 意味不明な内容だった それを聞いた彼女は 呆れてしまったのか はたまた僕の感想が理解が出来なかったのか 「…はぁ…」 と溜め息をついて 呆然と立ち尽くす僕を残して 部室を出て行ってしまった―
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