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第一章 1.婚約破棄
「カリナ・シルスは皇太子である私の婚約者としてあるまじき陰湿な女よ。
本日この時をもって貴様との婚約を破棄する。」
まさかあの皇太子が破棄をこの場で言うとは…国を越えた重要人物がいるのに
いや、だからこそか。そんなに見せつけたかったんだ。
「そうですか。では失礼しますね。」
「ないのか。未練とか…」
これは即答でしょ。
「ないですわよ。堂々とローズさんと幸せになってくださいな。」
「なんでローズのことを…」
「気づいてなかったとでも、舐めないでくださいまし。もう一回言いますね。失礼します。」
呆気なく皇太子に別れを告げるカリナ。
周囲の人は見惚れていたに等しいだろ。
微塵も感情の変化を見せず、浮気相手ともお幸せにとまでいう。
揺れる綺麗な銀髪と青い瞳とスラッとしたスタイル。
抜かりのない綺麗なお辞儀だった。
これで終わった。苦痛でもあった。次期皇后としての修行。
解放されて嬉しいはずなのに苦労が報われなかった悔しさと悲しさまである。
早く出ましょう。いずれ国外追放になる身なのだから。
傍らで一連のことを見ている人がいた。
「綺麗な動作。堂々としている。この子だったら耐えられるかもしれない。
俺の花嫁として。」
「ではあの方を次期正室とするのですか。」
「ああ。カリナ・シルスをな。」
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