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いつもの部屋に吸い込まれる。 その目は曇り一つなく、強い。 「はじめようか」 _____________ 白の服とズボンを脱ぎ、だぼだぼのパーカに着替える。白く清いものじゃないと泰也さんは興奮しないらしく、目にかかるぐらいの漆黒の前髪。黒糖のような煌びやかな瞳。白い陶器の様な肌。どれも最高に清いと泰也さんはいう。 「ありがとうございます。僕は、これで帰ります。父の方へよろしくおねがいします。」 いくらかのお金が父にわたる。いわゆる売春だ。俺の体が売られている。 その金の行き先がパチンコだろうと、俺の待遇は何もかわらない。小さい頃からの事だ。もうなれた。 「くらいからね、気つけて帰りなさい。」 「ありがとうございます」 柔らかい天使のような笑顔が四十手前のおっさんに向けられる。 泰也さんは、納得いったようにほほえみ裏玄関へ送り出してくれた。 体のあざを見つめる。 「あのサディスティック野郎め」 甘いもんくいてぇーな コンビニでもよるか、 ポケットをあさる。……五十円、家で拾った金だ。 「いらっしゃいませ~」 チョコレートを二つ買う 一つ二十円だ。 「すみません、これください」 チョコレートをつまむ。甘い しあわせ この時間だけが、続けばいいのに。 しばらく鮒橋の下で休憩する。 寒い、まだ二月だ。手の霜焼けに痒みが生じる。 出てきた頃が夜の4時ぐらいだから、多分今はそうとう遅い時間だ 家に帰りたくなかった。 「あの、」 「あ?」 横からなよなよした大学生?が、話しかけてくる。 「こんな暗い所でひとりは危ないよ」 どうやらおっせかいやきらしい。 「朝の散歩だよ」 「ほんと?にしてはまだ暗いよ、家は?」 「帰らない」 素直に答える。そういえばもう何日も家へ帰っていない。腹もへった。 大学生は、拍子抜けした顔をし手を伸ばす。 「僕んちこない?」 ぎゅるるるるるっとお腹の音がなる。 「飯くれるのか?」 「お腹がすいたの?いいよ、何でもあげる。」 初対面なのに、すごく親切だ。 俺は怪しい目でみる。 「やっぱいい」 どこか泰也のおっさんらしき匂いがする。顔がにてる? それだけで俺は充分嫌気がさした。 「じゃあこれ、パンだけど食べとき」 いちごジャムパンがわたされる。 それをひっぱたくようにとる。 「どっかいけ」 大学生は、少し呆れたように笑いその場から離れた。
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