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「榊さんもひとが悪いよなぁ。分かっていて黙っていたんだぜ」
「まぁ……彼女はわたしの友達、……だし」
「都倉。おれとおまえは友達……なんだよな」
見れば、まっすぐに、マキが、わたしを見ていた。あの夜空の下で……わたしが和貴に惹かれ、和貴に知られず、おじいさんの元へと通い詰めた、その事実を知りながらもわたしを愛すると誓ったあのときのマキが、ここにはもう――いない。
わたしは微笑んで答えた。「大切な友達……だよ」
そのとき、急速にわたしのなかでなにかが吹っ切れた。いままでかたちに見えなかったものが、友情というどでかい看板を携えてやってくる。……ああ、……彼に出会えてよかった。わたしは幸せだった。それで、いい……。
「そうだな」とマキは相変わらずの仏頂面で答えた。「おまえや……祐や和貴は、おれにとってもはや家族みてーなもん。高校時代はすげえ、楽しかったよ。おまえと出会えて、よかった」
――わたしを救ってくれたのはマキ。あなたなんだよ……。
あなたに出会えたからいまのわたしがある。
けども。わたしはもう、そのことを口にしてはならない。だってわたしはもう……。
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