#04. 生命

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 ふぅ、と息を吐く。忙しい日々も――中学校でのカウンセラー業務、それから、クリニックでのカウンセリング、プラス美織の子育て、かつ、和貴との生活……。目まぐるしい日々なのが更に台風のようになってしまった。でもそれが、心地よい。  結局わたしはマキに振られたのだと思う。聡い彼だから、きっとわたしの恋心なんて、分かり切っているはず。だからこその『友達』発言だ。くぎを刺したのだろう。彼らしいな、と思う。そしてそんな彼が嫌いになれない。  テレビの画面いっぱいに、彼が、指揮をするシーンが映し出される。きめこまやかな肌にうっすら汗が光っている。まあいいや。蒔田一臣が一生の推し。そんな人生も、悪くはない。とわたしはこころのなかに眠る少女をそっと抱きしめた。  ―完―
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