#02. 再会

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 結衣菜に押されるかたちで楽団所有のカウンセリングルームからホールへと向かう。建物がヨーロッパのそれのように荘厳で、かつ現代的で。歴史と斬新さを両立出来る、芸術というジャンルは素晴らしいものなのだな、と、芸術に疎いわたしでも思った。――そういえば。  吹奏楽に触れたのは、あれが最初だったな……稜子の演奏していた、『吹奏楽のための抒情的祭り』。きらびやかなステージで金色のフルートを奏でる彼女が女神のように見えた。それから……稜子がマキに泣きつく場面を目撃して。こころが千々に乱れたところを和貴に救われて……あの華奢なのにたくましい肉体に抱きしめられて。ときめきと苦しみを一挙に味わった。あの頃のわたしがいまのわたしを見たらいったいどう思うだろう? ――軽蔑する? 「あ。……ちょうど演奏してるところだよ」ホールに特有の重たいドアを開いた結衣菜が声を潜める。「『宇宙の音楽』……うぅーんあたしこの曲大好き!!」  ……わたしに吹奏楽のことはよく分からないが。とにかく音符が細かく、高い音に低い音まで自在に奏者が演奏しているのが伝わる。空気がふるえるのが目に見えるようだ。星の粒のような音のかたちが頭のなかできらめく。それは、まさに、流星群。
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