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「うお」隣にやってきたマキにまじでびっくりする。「いや……。夕飯食べようとしたらなんか、用事あるって……」
「ふぅん。じゃあ、おまえ、おれと飯、食いに行くか」
「えっ」
* * *
芸能人御用達みたいなお店って本当にあるんですねと。気がつけば都内の、個室の焼き肉屋に案内されていた。
「紘花にも連絡したんだが……あいつ、友達んちに子どもたち連れて遊びに行っているところで遅くなるって。真咲さんによろしくと言っていたぞ」
――奥様公認で不倫でもしているようなこの感覚。どう表現しようか。
「ぼーっとしてねえで食うぞ。ほれ。レモンだれに漬けろよこっちは」
「あ……ありがとう」トングで焼き肉を渡されるとなんだかまるで大学時代にタイムスリップしたかのよう。……ふたりきりで。よくよく考えたらこれ、……デート?
いや。駄目だ。そんなことを考える権利も資格もわたしにはない。これは単に、旧友をあたためあっている……それだけ。他意はない。
「マキは……いろんな役柄やっていて大変なんだね……まさかあそこにいるだなんて思いもしなかった」
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