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赤いカクテル
外を走る騒がしい救急車と一緒にドアベルの鳴る音が聞こえ、若い女性客が入店した。
客は入店してからずっとニコニコしていて、相当機嫌が良さそうだった。
カウンター席に座ってジャックローズを注文し、俺がシェイカーを振っている間もずっと笑顔を保って、こっちを見ている。
整っていて綺麗な顔立ちだが、その顔を見るだけで何故か手が震えてしまった。
本能が直接俺に警告している気がする。
「随分ご機嫌のようですね」
俺は出来上がった赤いカクテルをグラスに注ぎ、思い切って声を掛けてみた。
「はい、実はずっと前から欲しかった物が今日やっと手に入るんです」
「そうでしたか。ちなみに、どんな物かお尋ねしても?」
その瞬間、客の口が横に大きく裂けて「この星です」と答えた。
服の袖から赤く染まった触手がゆっくり出てきて、グラスに巻きついている。
店の外から、けたたましい警報のサイレンが聞こえてきた。
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