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どこに隠し持っていたのかと思いきや、ステージの裾にクーラーボックスを抱えた山野の後ろ姿が確認できた。
「何してんの?あの人たち…」
「この間な…」
灘乃が話し始める。
「話の成り行きで1年生に「過冷却」ついて説明した。物理選考してた3年なら仕組みは理解できてるよなぁ!?」
いつもの口調に戻ってしまった灘乃に、生徒も教師も保護者も大きく動揺する。先ほどまでの礼儀正しい所作も余所行きの見た目も台無しだ。
「どうだ?そこの卒業生代表!」
1番前の席にいた坊主頭の男子生徒が指名されて慌てている。
「えっと。過冷却は液体が凝固点…つまり水の場合だと0度以下になっても凍らずに液体のまま冷やされ続けることです」
「そうだ!正解!」
灘乃はニッと笑うと再び卓上の炭酸水を見る。
「まさにその状態を作ってきた。見た目はいつも通りの炭酸水だな!?」
青依の席からだとよく見えないが、確かに液体に見える。
確かアレが凍るには…。
「え?もしかして」
灘乃は再び悪そうな笑みを浮かべると、乱暴にその炭酸水を放り投げた。
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