青の通り道

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「道に迷ったら相談しに来い。報告があれば遊びに来い。だけどな。もう戻っては来るな。ここはもうお前らの『居場所』ではないんだ。どうか、通り過ぎて次のステージに進んでほしい」 灘乃の言葉に卒業生の大半が涙している。ひときわ大声で泣いているのは写真部の先輩方だ。 「保護者席の皆様」 一番後ろに設けられた保護者席へ声が飛ぶと、保護者の面々もぎこちなく姿勢を正した。 「もう一度言うが彼らはまだ青い。今日で卒業だと言われても、実感が湧かない子もいるでしょう。そうは言っても高校生に戻りたくなる子もいるでしょう」 卒業生の何人かが、自信なさげにうんうんと頷いている。 「それでも高校生活は一度きりなんだ。だから。どうか引き続き彼らを導く大人であっていただきたい。辛い時は寄り添い、嬉しい時に笑いあう。そうして確実に、一緒に進んでやってください」 保護者たちも涙目だ。 小声で『はい』と答える声もいくつか聞こえた。 それから灘乃は炭酸水を卒業生代表に放り投げる。大きくジャンプしてキャッチした男子生徒もまた、泣きながら灘乃に会釈した。 一呼吸置いて、今日一番の大拍手が巻き起こる。 まもなく卒業式は無事に幕を閉じた。
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