救われた少年

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「そういう話ならな…」 「え?」 「職員室に物理の参考書が山ほどあるから貸してやる。あと物理準備室にも面白い本があったな...」 「げ。そんなにいらないよ」 「遠慮すんな。たくさん読んで、色んな話を吸収しろ。ちょっと待ってろ、探してきてやるから!」 「あ、私も手伝います!」 速足の灘乃に張りきった様子の千歳が続く。職員室に物理準備室にと、どれだけ本をかき集めるんだと青依は寒気がした。 「そこまで大量に持って来ないでしょうから大丈夫ですよ。あれは椿さんの照れ隠し」 「そうなのかなぁ?」 「生徒から好かれて嬉しくてたまらないって顔です。私も千歳さんも嬉しいから、喜びはさらに2倍になりますね♪さ、紅茶でも飲んで待ちましょう」 火那の言葉に一応納得した青依は、黙って小さくなる2人の背中を見送った。 「ところで火那さん、その本は?」 火那に続いてテラス席へと移動しながら、ふと火那の手元が目についた。 「これですか?昨日、古紙回収ボックスに入っていました」 読み込んでからしばらく放置されたような感じのする、有名な青春小説だ。 「…それ」 「残念ながら穢れています」 肩をすくめて笑った火那は、それでも嬉しそうにその本を軽く抱きしめる。
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