本火葬

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灘乃は教室を出ると、そのまま渡り廊下の方へと歩いて行く。 正門から向かってアルファベットのHを横にしたような形で建つ筑峰高校(つくみねこうこう)の校舎は、生徒達の教室や職員室がある手前の一般棟と、理科室、美術室などの特別教室を集めた特別棟の2つに分かれている。 両者の真ん中を渡り廊下が繋いでおり、4階建て校舎のいずれの階からも行き来自由だが、1階だけは外部からも出入りできる外廊下となっている。 時間帯によってはそこを突っ切って奥の駐車スペースまで車を乗り入れる宅配業者やパン屋もいた。 「もしかして1階の購買部でなんか買ってくれるの!?俺あそこのアンパン大好き!」 「もうとっくに閉店してんだろ。だいたい渡り廊下歩いてんだから、行くのは特別棟だ」 青依のクラスのある4階から渡り廊下を使用して特別棟へ行くと、生物室や物理準備室等、理系のクラスが集まっている。 しかしそこへ立ち寄ることはなく素通りして、突き当りの階段で一気に降りる。 ドンッ! 階段を降り切った1階フロアに到着した途端に立ち止まった灘乃の背中に、青依が派手にぶつかった。 「いて!もう、急に止まんないでよ」 「着いたぞ」 【図書室】 「図書室?」 特別棟1階の真ん中の階段フロアは、階段から向かって右半分が図書室、左半分は家庭科室だ。 ちなみにフロア正面の両開きのドアは外廊下に続いており、日中は開け放たれている。 ここから一般棟まで戻ればすぐ右側は昇降口と購買部だ。 家庭科室には授業で入ったことがある青依だが、図書室は初めてだった。 図書室の外開きのドアは開け放たれており、それを止めるようにして長机が置かれている。 その上には大きな木箱が1つ。 「古本回収BOX」と張り紙がしてあるその木箱には、数冊の文庫本が入っているようだった。
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