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落とされた狐の神様。
「元気か?」
布団に座っていた灰色の髪の少女に話しかける。
「え、あ、はい。」
灰色の瞳が外を眺めていたのを俺に向けた。
祠の前で倒れていたところを拾ってきたのだ。
体には手当てもされていない傷が残っていた。
そして、起きたのは数日前の事だった。
「私は狐の神様をしています。
あの日、私はお母様に落とされてしまい…」
「動揺とかないのか?」
お酒を飲みながら聞いた。
「しません。」
彼女は外を向いて言った。
「過ぎたことは戻らないので。
あ、本当の姿を見ておいた方がいいですよね。
ちょっと外を見ていてくださいね。」
笑顔を見せてから突然、桜の花が咲き乱れた。
「あ、いいですよー。」
彼女は布を被っていて、表情はわからない。
服装は巫女服に似ているけども。
「彼らはもっと綺麗でしょうけど。」
銀色の耳と銀色の髪はキラキラと輝いていた。
普段から着けている髪飾りの鈴が鳴った。
着ているものは昔から巫女服らしい。
「いや、十分綺麗だ。」
「今日は満月なのでお団子でも作りますよ。」
「あぁ、そうしよう。」
「本当に綺麗な満月が出たな。月夜。」
「そうですね、神様ですから。」
銀色の耳と尻尾が揺れて、鈴が何度も鳴った。
「人と馴れ合うのは好まないと思っていた。」
「お母様に落とされた」
被っている透明な布を揺らして言った。
「どうして落とされたんだ?」
「さぁ、私には分からないですね。」
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