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2.アリスの剣
中学校に入ったアリスは、体格もよかったからか、担任の女性の先生から、
「岡野さんは何か運動部に入る予定はあるんですか?」
と聞かれたので、
「いえ、まだ考えていません」
と答えたところ、
「私は剣道部の顧問なんですが、やってみる気はない?あなたなら背も高いから、いい上段使いになるわよ?今日の放課後に良ければ見に来てごらんなさいよ」
と誘われ、(まぁ、あんまり気乗りはしないけど、見に行くだけなら…)と思い放課後剣道場を訪ねた。
剣道場ではあの背の低い女性担任が、ちょうど面を付けて大きな男子生徒と練習試合をしているところだったので見ていると、竹刀をすーっとうえに上げ、面の直上で止めたかと思うと、
「キェーーーーーーーー!!」
と気合を吐くと、そんなはずはないのに、先生の大きさが倍増したように見えた。対する男子生徒は気合に押されたじろいだと思ったら、先生はすかさず、
「パーーン!」
左手一本で相手の面を打ち据えた。
それを見ていたアリスは、
「うわー、キレイ…」
と思わず声を出し、それからは目を見開いて先生が部員全員を倒していくのを見つめていた…。
練習が終わり、アリスの元にきた先生は、
「どうでしたか?身体の小さな私でも、これだけのことができます。岡野さんならもっともっと強くなれるのは間違いないです。やってみませんか?」
と言われ、アリスは思わず、
「やります!」
と答えていた。
アリスには元々不思議な能力がある。動物の言葉がわかる時があり、特に猫とは相互に会話ができる。また、最近では人の思考まで読めるようにもなっていた。
剣道を始めたときはまだおぼろ気にしか感じていなかったものが、集中を要する剣道のせいかはわからないが、人の考えもかなり読めるようになっていた。
練習試合をしても、相手の考えがわかり、アリスは負けることがあまりなかった。剣道では相手の切っ先の動きなどを見て、ある程度クセを読んで対処することはあるが、アリスはそういうレベルではなかった。
剣道の基本、「中段の構え」からの攻撃・防御等を習得すると、顧問の先生から上段を教わることになった。先生が使っている上段は、中段の構えから左足を前に出し、竹刀を上に上げたオーソドックスなタイプだったが、先生から、
「上段の真の強さは片手面や片手小手ですが、その前にもろ手で確実にできるようになってからでないと効果が期待できません。まずはもろ手で練習を重ねてみましょう」
と言われてから、アリスは猛練習を始める。
もろ手がまともに出来だしてから片手技へとカリキュラムを進め、剣道を始めてわずか3か月で上段が仕上がった。
背の高いアリスが上段に構えると、迫力は先生の比ではない。
剣道4段の先生と、相上段で試合をするさまは、もう技術ウンヌンではなく気合のぶつかり合いだった。しかもアリスは相手の考えを読むことができるため、そのうち先生でも刃がたたなくなった。
新人戦はもちろん、どんな大会でも常にアリスは優勝を飾ることができた。
2年になると、すぐ主将に抜擢され、チームのけん引役となっていく。
中学時代に開花したしたアリスの剣は、高校に入っても衰えないどころか、ますます強くなっていき、インターハイに駒を進めた。
しかし、インターハイの決勝で強敵と出会う。それは、愛媛県代表の神崎レイラという少女だった…。
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