4.暴漢の悲劇

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4.暴漢の悲劇

…(冒頭の暴漢に襲われたシーンに戻る)  再び鏡川の土手道。レイラの前にいる男は、「へへ…」などと言って見るからに凶暴なナイフをペロッと舐めた後、ナイフを持った右腕をレイラに向かって伸ばしてきた。同時に、 「バキッ!」 暗い闇に「キラッ」と光る物が放物線を描いて飛び、カシャンと道に落ちた…。直後、 「ギャああぁぁ!」 ナイフを持っていた暴漢は、右手を押さえて絶叫を上げていた。よく見ると、押さえた付近から先の部分が、真下に垂れてぶらぶらしていた…。  ただの竹刀で叩いても腕が折れることはまずない。それだけレイラの剣は速く、鋭かったみたいだ。  その光景を見ていた連中は、一気に逃げ腰になっている…。 その時、 「そこまでだ!全員動くな!!」  見ると、周囲にはパトカーがたくさん来ていて、警察官が全員を取り押さえてくれた。 「なんだよー!オレらはあの大女に叩かれたんだぞ!?」  アリスは3人の鎖骨を砕いたみたいだ。あの剣で頭を叩いたら、殺してしまいかねないので、肩を叩いたようだった。 「今大女と言ったのはお前か?」 「そうだよぉ、あの大女に肩を叩かれ骨が折れたんだぞ?」 「ん?ここか?」 と言って指揮をとっていた警察官はそいつの肩をもんだ…。 「ギャあぁ!イタいんだよぉ!」 「おおすまん。オレの娘の大女がやっちまったから、少しもんだら治るかと思ってな」 「な…なに?オッサンの娘かよ…」と言ったあとうなだれて何も言えなくなった…。 「レイラさんだっけか、アリスの父、岡野孝一と言います。いつもアリスがお世話になってます」 「あ、いえ、私の方がお世話になってます…。神崎レイラといいます…」 頭を下げると、プラチナ色の長い髪がファサっと前に垂れた。  レイラとアリスのおかげで、暴漢5名が… アリスが、 「あ、待って…」 と言うと、竹刀を真っ暗な草むらにやり投げのように放り投げたら、 「ギャッ!」 と言ってもう一名が出て来た。アリスが隠れている暴漢の考えを読んだみたいだ。 こうして暴漢6名が無事逮捕された。  人の考えの読める白猫のシロと人と話せる黒猫のクロのおかげで、今まで起きた暴行事件の全容が解明され、こいつらが全て関わっているとわかったのは半月ほど経ってからだった。  レイラは、 「アリスー、あのときどうやってお父さんに連絡したの?」 と不思議そうに聞いて来た。あの暗闇でスマホを使う間などなかったはずだから、レイラはずっと不思議に思っていたことだった。 「あぁ、あれ?私とパパとママとはテレパシーみたいなもので話せるのよ」 「何でもアリなのね…」 とレイラは笑った。  そいつらを逮捕した翌日の新聞には、「女子大生剣士、お手柄!」の見出しでデカデカと載った。 渚の街のモノクローム外伝 レイラアナザーストーリー⓵「アリスとの邂逅」終 あとがきは次のページです。
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