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同時刻──
建物の玄関口に備えられた、犬猫が出入りする小窓からひょこっと灰色の猫が頭を覗かせた。
水色の瞳が注意深く左右を確認し、のそっと小窓から体を出す。
今出たばかりの建物を見上げ「……今回も外れか」と言葉を吐く。
もし此処に人が居たのなら、声を上げ驚く事だろう。人が居ればの話だが。
灰色の猫こと『リュカ』は疲れた様子で顔をしかめる。
「はぁ……ん?」
向かいの壁に貼られたポスターに目が留まる。
内容を見ようと見上げるも人間用の高さで良く見えない。仕方なく目の前のゴミ箱を足場に近づく。
〚 “ Carnival開催のお知らせ。一週間限定、大広場から商店街通りを始めとするビーチャリー大通り周りの住宅区までを予定しております。美味しい食事から珍しい商品まで沢山のお店がありますので是非誰でもご参加下さい ” 〛
内心笑い飛ばしたいところであった。
「…何が誰でもなんだよ。商店街通りはまだわかるとしてもビーチャリー大通りは綺麗な見た目とは裏腹に密売やら奴隷の売買もある治安の悪い場所だろ。どう考えてもアウトだろ」
イライラが溜まっていたのか吐き出す言葉に棘を含んでいることに気づいて、息を吐き出す。
「はあ…怒ったところで仕方ないだろう。見つからないのは僕のせいじゃない。……諦めずに捜そう」
昔誰かに言われた言葉を思い出しながら自分にそう言い聞かせる。
心を落ち着かせ、もう一度ポスターを見上げる。内容をもう一度読み直す。
「…ん?」
さっきは気づかなかったが左端の下に小さく地図が記載されている。
良く見ると何処に店があり、何処から何処までが範囲内なのか、何処に行けばいいのかまでかなり事細かく記載されている。
「これは好都合かも。捜し物がある確率は低いけど、行ってみる価値はあるかな」
脳内で地図の情報を記憶し、カーニバルへの道を行く。
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