行方不明者を発見した日。

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行方不明者を発見した日。

 今日は、東雲有紗ちゃんの捜査を捜査員と一緒にしに行った。 なぜ俺が捜査員について行ったかと言うと、童子村のことで何か新しい発見があるかもしれないと直感で思ったからだ。 これも、先輩刑事に相談して許可を得てから一緒について行っただけなんだけどね。 先輩には、「ものすごく仕事に積極的じゃないか。どうした?」と何かしら不思議に思われたが、僕にもわからない。  そして、なぜだかわからないけれど、あの東雲有紗ちゃんって言う子も、童子村変死体事件に巻き込まれて気がならない。  東雲有紗ちゃんが行っていたバイト先や訪れていた場所へ行っても、東雲有紗ちゃんがどこかしら何か変わった様子も、不良に絡まれて何か非行に走ってドラッグを吸うようになっただの、聞かなかったので、もしかしたら、童子村と呼ばれる、あの鬼が出ると噂の山奥にある無人神社へ捜査員と相談して向かった。  うへえ。山奥の無人神社って、何か異世界と繋がっている感じがして、ちょっとホラーっぽくって俺は寒気がした。 鬼が出てくるって言っていたけど、普通の神聖な無人神社だった。 タンポポとかシロツメクサの植物や色んな花が咲いていて、神社の建物もあって、空も虹が出ていて、まるで雨上がりの晴れた天気のようで、ヒイラギとヒサギとエノキとツバキと思われる木も、生えている。 穏やかでのどかな場所で、恐ろしい変死体が上がるとは到底思えない場所だった。  俺は低木が生えている辺りを見回していたら、裸になって倒れている一人の女性を、その低木が沢山生えている中から、見つけた。 すぐさま捜査員に通信をして、知らせる。そして、署の東雲有紗ちゃんの行方捜査に携わっていた刑事たちとも連携をし、救急車も呼んだ。  そう言えば、何か頭がオカシイ事言いに署に来た女の子一人、男の子二人の男女三人の大学生がいたっけなぁ。誰か違う刑事がその時、担当していたような。 一応、事情聴取を童子村変死体事件として取り扱ったフリしてメモしたんだけども。 その子らも、確か、東雲有紗ちゃんの名前を出していたような気がする。  あー、それにしても、女体って綺麗だよな~っと思いながら、救急隊員から話を聞くと、まだ意識不明の重体で息はしていると言っていたので、すぐさま病院へ連れて行って欲しいとお願いして、さっき思い出した男女の大学生三人から、話をもう一度聞くことにした。 童子村変死体事件の参考人として。  あ、その前に、東雲有紗ちゃんのご両親に、東雲有紗ちゃんは見つかったけど、病院に搬送されたことを警察署か俺から連絡して伝えるようにしないといけないなぁと、これからどうするか考えていた。  童子村で見つかった東雲有紗ちゃんの搬送先の病院が決まり、俺は、彼女の父親からもらった名刺を見て、電話をかけて、東雲有紗ちゃんの入院先の病院名とどこで見つかったか、伝えて、童子村へ行っておかしなことを証言していた、男女三人の大学生の取り調べの日程をいつにするか等、その大学生の取り調べの担当していた刑事と相談し、今日はそれの資料を探したり、書類を整理したりして、定時に上がれた。  …今日は裕子ちゃんからのご飯のお誘いはないか。 俺はそう思いながらスマホの通知を確認して、署の職員用の駐車場へ行き、車で自分の家に帰った。  あ、夕飯買ってない。何度も何度も自炊しようと思うけれど、体力が無くて疲れていたから、コンビニに行ってカップ麵だけで済ませようとして、もう一度家から出て行って、車でコンビニへ向かった。  コンビニに裕子ちゃん、いるわけない、か。何を期待していたんだろう。俺は。 俺は裕子ちゃんに夕ご飯のお誘いをしてみた。一応、断られた時の為にカップ麺も買ったけど。 …やっぱり、裕子ちゃんに断られた。残業があるからって。 まぁ、いいや。と思いながら、俺は車に乗って自分の家に戻った。  家に戻った瞬間に、脱ぎ散らかして冷蔵庫にあるビールを取り出して、宅飲みしながらテレビをボーッとして見ていた。  あー、つまらない。テレビの内容がつまらないというよりか、俺の人生がつまらないって言うか。確かに仕事もしているし、彼女だっている。それなのに満たされない。仕事中、怒られているのがベースだからか? それとも、なりたかった者になれなかったからか? あんだけ期待されて勉強だけしか、させてもらえないまま育てられたと言うのに? 自分の彼女から愛されている実感も愛している実感もないからか? 裕子ちゃんに対しては、色々、仕事の愚痴聞いたり、色々かなり気を使って抱いたり、寂しくならないように、気を使っている、あ、いや、好きで愛しているはずなのに。  今、放映されているテレビの内容もつまらないし、チャンネルを変えても、どれも面白そうなテレビ番組じゃなかったので、テレビの電源を切ってしまい、それでもビールを飲み続けた。  …ん?何か、テレビの画面の様子がおかしい。テレビの画面が黒と灰色で渦巻いている感じがする。そして、ズズッとノイズか聞こえてきた。テレビがいきなり故障したのかと思い、俺はテレビの画面に近づいて見ると、テレビの中から、人間の手が伸びてきて、俺の腕を掴んだ。 「な、なんだこれは?!」 その手を振りほどこうとしても、その手は俺の腕をかなり強く握り絞めて中々取れない。  そして、俺は力づくで後退りをすると、今度は人間の女の子の裸の上半身が一気に出てきた。思ったより小柄だった。 「ヒッ!!」 某ホラー映画みたいにテレビから女の子が出てきている…っ!!!このまま俺は、この女の子に殺されるのかと、恐怖で固まっていたけど、何とか後退りして逃げようとしても、逃げられなかった。  とうとう後退りしても、俺の背中がベッドにぶつかり、これ以上後退りしても身動きが取れず、もう俺は逃げ切れなくて、その女の子の体もテレビから全身出てきて、俺の体にまとわりつきしがみついてきた。  某ホラー映画のようにテレビから小柄な裸の女の子が出てきて、俺の体にしがみついて離れてくれないまま、首も絞められず、信じられないことが目の前で起こり、更に恐怖で、失禁などはしなかったが、放心状態でいた。  …女の子の感触ってこんな感じだったか? 俺はこの女の子が死体じゃないか疑ったので、脈をはかって、色々、その子の体を触ってみた。けっ、決して、イヤらしい意味での身体チェックじゃないからっ!! ちょっと、女性の皆さんには怒られそうな部位を触ってみた。 俺がその部分を触ると、テレビから出てきた女の子は、眉間にしわを寄せて、 「んぅ…っ!」 と、体をびくつかせていて、俺はものすごく色んな意味でドキドキしたけど、彼女の体から俺の体に伝わってくる体温は生きている人間そのものだった。  その子の顔と体を俺はじっくりと見る。顔は美人とか綺麗と言うよりも可愛らしいって感じで愛嬌がある童顔。髪型は前髪がある肩にかかるかかからないかぐらいのショートヘア。そして、体は全体的にこじんまりした作りで小柄。ある部分を除いては。ある部分だけ発育が良い。この子の印象は、俺にしたら全体的に甘ったるく感じた。ハッキリ言って、僕の好みじゃないなぁ。可愛いっちゃあ、可愛いんだけど。 しっかし、どうすれば良いのか、俺はただ茫然としていた。  とりあえず、このままじゃ俺は身動きが取れないので、色々大丈夫か確認して、しがみついてきたこの子の体を俺の体からなんとか引き剥がし、自分のベッドの上で仰向けで寝かした。  それにしても、一日で二人も違う女の子の全裸を見るとは、俺はツイているのかなと。 明日からどうしよう。この子はどれだけ自分の事を言ってくれるのか。婦人用の服なんて何もないぞ。 もう一度、彼女の脈をはかっていると、彼女の口から吐息が聞こえてきた。 …どうやら、寝ているみたいだ。  明日っからどうっすかなー?と考えつつ、俺は仕方なくソファで寝た。  朝、俺はソファで起きると、昨日テレビから出てきた小柄な女の子がうろちょろ掛布団を被りながら、俺の家の中歩いていた。 …生きてる?!って、言うより、本物の人間だったのか?と、俺はものすごく驚愕している。掛布団を全身にまといながらその子は、家の外へ出ようとしていたので、俺は家のドアに近づき、彼女が外に出ないように阻止した。  彼女は俺の掛布団を覆い被りつつ多少体を震わせながら、俺を睨んできた。 「…貴方、誰なんですか?ここは、貴方の自宅なんですか?ここで私に何をしようと?」 この子、俺にものすごく警戒している。そして、俺の部屋の中を見渡し、キョロキョロしているので、俺は両手を半分挙げた。俺の家のドアが開かないように背中で死守していながら。 「ホラ、この通り、何もしないからさ君の事を教えてよ。それに…」 俺は、彼女を凝視しながらスーツの上着を取り出し、胸ポケットから警察手帳を取り出した。俺がスーツの上着を取り出そうとしている最中に、彼女は台所にある包丁を見ていた。 「僕、刑事なんだよねー。だから、君に危害を加えないから安心してよ。もし、今、君が台所に行って包丁を使おうとしなければ、の話だけど。」  彼女は、「しまった!」と顔をした後、しょんぼりして、瞳を潤ませながら再び体を固まらせた。 表情が色々コロコロ変わって見ていて面白い。 「僕、仕事に行かなきゃ行けないんだよねー。ちょっと、手短に君の事教えてくれない?」 彼女は涙目になりながら、小声で自分のことを話始めた。 「さ、西東 真奈子(さいとう まなこ)です…。西と東と書いてさいとうと読みます。真奈子は、真実の真に、奈は奈良県の奈、子は普通に子供の子です。年齢は十九歳で、芸術大学に通っていたはずなのに、お風呂で寝てしまっていたら、まさかこんな所で起きるとは、思いませんでした。」 「そ、そうか…。」 テレビから出てきた記憶はないんだな。 「家出とかしてきたの?」 「いいえ。家出した記憶はないのですが…。」 「まさか、貴方、私を誘拐して、乱暴しようと?刑事さん、貴方、お巡りさんでしょう?犯罪をしようとしてどうしたんですか?」 西東真奈子ちゃんは、俺をものすごく蔑んだ目で見ていた。あの童顔で愛嬌がある顔立ちから考えられないほどに、目を鋭くさせて俺を見ていた。 「し、信じられないかもしれないけど、君、裸でテレビから出てきたんだよ。僕もこの状況、信じられないし。」 西東真奈子ちゃんは、大きいため息をついて更に掛布団を覆いかぶせた。 「そうですか。ところで刑事さん、お仕事の方は大丈夫ですか?ちなみに私は、ただいま、物凄くお腹空いています。」 西東真奈子ちゃんは、あれだけ俺を蔑んでみていたのに、いきなりうつむき加減で、お腹の音をグーッと鳴らしていた。 俺は笑いがこみあげてしまった。 「アハハ!やっぱりテレビの中から某ホラー映画みたいに出てきたわりには普通の人間の女の子なんだ。ごめんね!俺さ、料理とか全くしないから、今、家にあるのはカップ麺しかないんだよ。」 「えー。小学生の時の家庭科の授業とかどうしていたんですか?」 「そんな遠い記憶のこと覚えてないよ!」 西東真奈子ちゃんは、納得がいかないように俺を見上げていた。 「あ、僕の自己紹介まだだったね。僕の名前は、旭日昇。よろしくね。」 俺は欧米人っぽく手を伸ばし握手を、真奈子ちゃんにするように誘ってみた。 「は、はい。よろしくお願いします。旭日さん。」 真奈子ちゃんは小さい手で俺の手を握り返した。ほっ。良かった。彼女の警戒心は解かれたようだった。 「今日も、僕、仕事に行かなきゃならないし、君も着る服ないでしょ?この家にいてもらっても良いんだけど、ちょっと、一通り、軽く案内するよ。」 俺は、ベッドと洗面所と風呂と台所とベランダを案内して、お昼ご飯と夕飯に種類が違うカップ麺を渡して説明して、彼女に、俺の半そでのTシャツを渡して、それに着がえてもらった。な、なんか、彼ティーを着ているみたいだな。胸とお尻が150センチぐらいしか無い割には大きめで、Tシャツの絵のデザインが少し崩れていて、少しエロかった。 あー、ダメダメ。俺には裕子ちゃんが。裕子ちゃんに誤解されずに説明どうすれば良いのだろうかとか、この後どうするか、あの子の個人情報をどう調べようか等、色々考えながら、急いで眼鏡をかけて身支度をして俺は職場へ向かった。 まぁ、裕子ちゃんと会う場所でこの家をあんまり使うことは無いんだけども。  それにしても、十九歳の割には幼く見えるなぁ、真奈子ちゃん。
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