童子村変死体事件、捜査三日目。

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童子村変死体事件、捜査三日目。

 昨日の夜、真奈ちゃんが段ボールを持っていた。俺のクレジットカードで払った彼女の服や下着が届いたらしい。 そして、今日から、真奈ちゃんは外出できるようになり、ある程度お小遣いを渡して、朝食と夕食の材料を自分で買えるようになった。  捜査一課に、東雲有紗ちゃんが入院している病院から、意識が回復して目覚めたと、連絡が来た。 意識が回復した良かったけど、やっぱり、十五年前の事件の資料や調査報告書を読んだ通り、皆喜多美鶴さんの時と同じような感じで驚いている。じゃあ、三十年前はどうだったのか。 三十年前の資料は見つからない。どうなっているんだ? 十五年周期で起っている変死体事件ならば、三十年前の調査報告書や捜査結果が保存されていても良いはずなのに、何故かそれが、無い。 ネットで検索しても、検索結果が出ない。でも、図書館等の歴史や伝承、言い伝えなどの資料はある。ますます意味不明だ。 本当にこの世のならざる者が、俺たち童子村に行ったりその村に関わったことがあったりする人間達の記憶が変えているのかと言うのか。 そんなことって、あるのかな?  二年前に自殺した鵜飼椿君の事も調べたけど、変死体として見つかった二人も何の人間関係の繋がりとかもなかった。 あ、病院に行くんだったら、真奈ちゃんのことも聞かなきゃならない。あの子こそ本当に何者なんだ…?本当に人間なのか、それともこの世のならざる者なのか…。 あと、最近、俺も幻覚みているような感じだ。 苦手だとか嫌いな同僚や先輩に対して、男にだけだけど、一瞬、数秒ぐらいだけ、その男たちがそれぞれ違う二メートルぐらいの大柄な鬼に見るんだけども、驚いて瞬きしたら、元のその嫌いな人間に戻っていると言う奇妙なことが起こっている。  疲れてんのかな?俺。有給でも取ろうか。久しぶりに一人きりになって一日中寝たい。  今日も定時で終わった。早速、裕子ちゃんにスマホでメッセージを送る。でも、既読が付いていて、いつもより素気ない返事だった。  ハァ。仕方ない。真っすぐ家に帰ろう。真奈ちゃんの料理でも食べよう。  家に帰ったとたん、ハンバーグの良い匂いが充満していた。 「あー、おかえりなさーい。あ!ごめんなさいっ!換気扇つけるの忘れてました。」 「良いよ良いよ。俺、ハンバーグの匂い、好きだし。」 「そうですか。」  初めて真奈ちゃんと出会った時は、料理に自信がないって感じだったし、なんだっけ?確か、自分の母親の味知らないから料理上手く作れているか自信がないって言っていたような、言ってなかったような。 なんで、この子との記憶も曖昧なんだろう。  真奈ちゃんが二人分の味噌汁と白ご飯と、ケチャップが付いたハンバーグとキャベツの千切りをのせたお皿を持ってきて、それらを机の上に置いた。 まるで、新婚の夫婦みた…、あ、いや、俺には裕子ちゃんが。 「いただきまーす。」 裕子ちゃんのことを考えていたら、真奈ちゃんは俺より先に夜ご飯を食べ始めた。 そして、俺がハンバーグに口を開けて食べようとした時に、俺のスマホから着信がきた。 画面を見たら、月島裕子と表示されていて、即、電話に出た。 「はい、もしもし。裕子ちゃん、どうしたの?」 「あ、旭日くん。今すぐ、前行った居酒屋に来てくれない…?」 裕子ちゃんの声色はいかにも今すぐにでも泣きそうな感じだった。でも、俺は、今、真奈ちゃんが作ってくれた夕飯食べているし、真奈ちゃんは怪しそうに俺の顔をじっと見つめているし、こう言う突然来て欲しいという電話が来ることは何回かあって、ずっとすぐにでも裕子ちゃんの元へ向かっていたけど、真奈ちゃんのご飯のことで、最初は断ろうとした。 「裕子ちゃん、電話でお話聞く事はダメなの?」 「ダメ。今すぐ来て欲しい。」 「どうしても?」 「どうしても。」 …俺が断りにくいのを知っているのかな。ズルいなぁと思いつつ、真奈ちゃんに平謝りしまくって、明日の朝に食べるから残しておいてと言い残して、真奈ちゃんにかなり睨まれながら、俺は裕子ちゃんがいる居酒屋へ向かった。  居酒屋に着くと、裕子ちゃんは独りでウーロン茶を飲んでいた。 「…どうしたの?」 「旭日くん、いつもならすぐに来てくれていたのに、どうしたの?」 「ごめんごめん、夕ご飯食べていたから、もったいなくて。」 「へぇ。女の子じゃなくて?」 「隠していて、ごめん。女の子って言っても、ただの親戚の女の子を一時的に預かっているだけだから。」 と、とっさに裕子ちゃんに嘘をついてしまった。でも、テレビから某ホラー映画みたいに出てきたからその子をしょうがないから一緒に住んでいるなんて言っても信じてくれないだろう。  居酒屋で泣いている裕子ちゃんの愚痴を聞いて、ご飯を食べ終わった後、久しぶりに彼女とラブホへ行って一夜をともにした。 「旭日くん、ありがとうね。」 「あぁ、うん。あ、僕も仕事のことで相談していい?」 「えぇ。」 「被害者の高校生ぐらいの女の子がさ、入院しているんだけど、お見舞いに何を持って行ってあげれば良いと思う?」 「フルーツの飲むゼリーとかで良いんじゃない?だって、病気か怪我しているんでしょ?駅前に百貨店にある可愛い飲むフルーツゼリーが売ってあるから、そこで買えば?」 「わかった。ありがとう。ちょっと同居人のことが心配だから、先帰るけど、大丈夫?自分で帰れる?」 「無理。」 即答だった。でも、初めてだ。裕子ちゃんを煩わしく思ってしまった。 そして、仕事に向かう為に、シャワーを浴びて身なりを整えて、裕子ちゃんと部屋を出て、僕がホテル代を払い、二人でラブホから出て、裕子ちゃんを彼女の職場の近くまで送った。 そして、俺は遅刻しそうだったから、俺の家には一旦帰らず、そのまま署に向かった。 真奈ちゃん、怒っているかどうか心配しながら。  
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