童子村変死体事件、捜査五日目。

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童子村変死体事件、捜査五日目。

 昨日は、仕事帰りに東雲有紗ちゃんのお見舞いの品を買いに行って、そのまま真っすぐ家に帰った直後、真奈ちゃんに少し怒られた。 裕子ちゃんから電話が来た時に食べようとしたハンバーグも、今では真奈ちゃんの胃袋の中だった。 …東雲有紗ちゃんと同じお見舞いの品をあげたら、少し機嫌治ったけど。  署に着いてから、いつも通りタイムカード切って朝礼して、情報連携して、書類整理をした後、俺は、東雲有紗ちゃんが入院している病院へ向かった。 そして、東雲有紗ちゃんの入院している病室を医療事務員さんに聞いて、ついでに真奈ちゃんのことも聞いてみた。 「あのー、西東真奈子って言う、女の子も入院していますか?彼女の名前の漢字は、さいとうは方角の西と東で、まは真理の真、なは奈良県の奈に、こは子供の子なんですけども。」 「今から確認いたしますので、少々お待ちくださいませ。」 パソコンで、真奈ちゃんの本名を入力した後、その医療事務員さんは睨んだようにパソコンの画面を見て、その後、俺の顔を申し訳なさそうに見た。 「申し訳ございません。この方、現在この病院には入院していませんね。」 「あー、いやいや。こちらもありがとうこざいます。」  僕は頭を少し下げてお礼を言って、東雲有紗ちゃんの病室へ向かった。 僕は、東雲有紗ちゃんが入院している病室の扉をノックした。 「はい、どうぞ入ってくださいー。」 な、なんかやる気の無さそうな声色だなぁ。病み上がりだから仕方ないか。 「おはようございますぅ。朝からすみませーん。僕こういう者なんですけど…。」 僕は、自己紹介の為にスーツの胸ポケットから警察手帳を取り出して、彼女に見せた。 「君、東雲有紗ちゃんで、間違いないよね。」 「え、はい。あの、もう事情聴取するのですか。」 「まだしないよー。それに、君、まだ退院してないでしょ?」 全裸だったあの子が目の前にいてちょっと興奮する。あ、いやいや。こんなこと仕事中に…、多少は良いか。それにしても、色素が薄くて、前髪無しの栗色のワンレンボブショートで、目の色も明るい茶色で色素薄い上に可愛い。あ、いや、美人系だよねえ。 思わずニンマリしてしまう。冷静をよそわなきゃならないけど。 こんなとこ、真奈ちゃんと裕子ちゃんに見られたら、絶対に嫉妬して怒られるだろうなぁ。よかったぁ。仕事中で。 「僕は、旭日昇。童子村事件を担当している刑事なんだ。東雲さんが退院してからじゃないと、事情聴取できないことになっているから、今日は、挨拶に来ただけ。」 「は、はぁ…。」 東雲有紗ちゃんが戸惑ってい返事した後、僕はスーツの上着のポケットから小さいメモ帳とペンを取り出して、自分の名前と携帯電話番号を書いて、メモ帳の紙をちぎって、そのちぎった紙を東雲有紗ちゃんに渡してくれた。 「これ、僕の電話番号と名前。東雲さんが退院したら、事件の事情聴取始めるし、退院後に連絡よろしくね。あ、僕に連絡するのを忘れたら、警察署の方から東雲さんの家に電話がかかってくるからね。」 その後、俺は紙袋を持ちあげて、東雲有紗ちゃんにお見舞いの品のフルーツの飲むゼリーを渡した。 「これ、お見舞いの品ね。じゃあ、またね。」 俺が病室から出ようとした時、東雲有紗ちゃんは焦って俺に声をかけてきた。 「あ、あの…!」 「へっ?」 「彩華ちゃん達は、生きているんですか…?」 「あー、大丈夫。生きているんだけど、ちょっと精神鑑定されているだけ。」 「精神鑑定?どうしてですか?」 「どうしてって、そりゃおかしなことを言っているからだよ。大学生だし、一応ドラッグとかそう言うのやってないか調べる為に、色々、検査したけど何も出てこなかったけどね。」 東雲有紗ちゃん、友達のことを心配していたみたいで、安心して泣きそうになっている。可愛いなぁ。実は真奈ちゃんよりも、東雲有紗ちゃんの方が外見、好みなんだよねえ。 「あと、君のスマホのこともごめんね。一応重要な証拠品かどうか調べる為に署の方で預かっているから。不便な思いさせて、ごめんねえ。」 「あ、いえ、大丈夫です。」 「それじゃあ。またね。」 もう引き止められないだろうと思って、僕は彼女の病室から扉を開けて出て行った。  それにしても、良い匂いしていたなぁ。女の子の匂いって感じ。こんな可愛い、あ、好みの子と一緒に事情聴取するなんて、楽しみだなぁ。  署に戻って、東雲有紗ちゃんと一緒に童子村に行ったと思われる男女三人の大学生の精神鑑定の結果と事情聴取の内容を、担当していた別の刑事から聞いてみたら、やっぱり、尿検査しても異常は無かったし、精神鑑定も責任能力があるというか、正常だというか。  あとは、東雲有紗ちゃんから事情聴取するだけか。本当に解決するのかな。この事件。 それにしても、俺も何か精神的にやばいのかもしれない。人間の男が鬼に見えたりする。真奈ちゃんと出会ってしばらくして以来。それに、真奈ちゃん、鵜飼椿君とも繋がりがありそうだし、もしかしたら、あの変死体で上がってきた二人も真奈ちゃんと関連があったりするのかな。調べられるなら、調べてみようかな。  死体で上がってきた二人の名前は、大鷺 若菜(おおさぎ わかな)と山路 涼介(やまじ りょうすけ)か。 大鷺若菜は、真奈ちゃんと同級生だと思われる女性だけど、違う大学に通学を生前していて、大学の専攻も画家とかそういう芸術系ではないみたいだ。 山路涼介は、真奈ちゃんが通っていたと思われる、芸術大学の教授だと思われる。  しっかし、あの真奈ちゃんが、芸術大学の女子大生だとは。まだ確定していないけど。彼女の作品も気になる所。 真奈ちゃん、子供っぽいから、何か可愛いゆるキャラなイラスト描いてそうだよね。  今日は、定時に上がれそうだ。 そう思って、今日も俺は裕子ちゃんにスマホでメッセージを送ろうとしたら、何故かやる気が無くなった。その代わりに何故か、真奈ちゃんの笑顔が思い浮かぶ。 …俺、真奈ちゃんに惹かれていってるのか。 でも、これじゃ浮気じゃないのか。 裕子ちゃんのことが、俺はまだ好きなのかもわからない。  ダラダラと、裕子ちゃんにスマホでメッセージを送りつつ、自分の車の中で待機していたら、何故か真奈ちゃんの作品のことで頭がいっぱいになった。
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