はじめて

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 人生になれたはずなのに、よくよく考えたら、はじめての人生だ。  本当にはじめてだらけだから、なんでも挑戦した。文学だって、なんだって。  そういえば、生まれのも、母のおなかの中にいたのだな、としみじみ思った。母ははじめての出産で、痛くて苦しかったけど、僕が生れて嬉しかったと、話している。  成功するのもはじめて、失敗だらけの人生で、病気に罹ったのもはじめて。  そしていつか僕は死んだ。はじめて死んだ。    そういった記憶を忘れて、自分の意志でまた世界に来た。  そこでもまたはじめて人生を経験したような気がする。  一歩進んで、人生を終えるか、三十歩進んで人生を終えるか。記憶を消されたのもはじめて。いつの日か、神になったけど、それでさえ、修行を終えて、はじめて、他人を救った。  神になって、自分だけの世界を創った。それもはじめて。  そのうちにたくさんの世界が出来て、魂を吹き込むと、人間は人生をはじめて生きる。  はじめてだらけなんだから、失敗してもいいよね、なんて言い聞かせながら生きている。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!