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「うぐぅっ!」
全身にピシピシと稲妻が走る。ある重要なことに気づいてしまった。この違和感は……まずい、このままでは完璧主義の俺は集中することができない。
辺りを見回す。よし誰もいない、いまのうちにこっそりと……
「あ、おはようございます」
えっ? そっと後ろを振り向く。そこにお隣さんが立っていた。都内の大学に通う女子大生、スタイルのよい清楚な感じの女の子。そして俺が密かに心を寄せる女性でもある。
「ミユさん、お、おはようございます……」
「どうしたんですか? 具合でも悪いのですか?」
いや、そんなことはない。ただ、ただ、あれが……
「いやあ、別に。これからお出かけですか?」
「はい、今日は一限目から受講なので。ヨコチさんはどちらへ?」
「今日はですね、仕事で都内へ向かいます」
「へえ、どんなお仕事されているのですか?」
「声優をちょっとね」
「え? 声優さん? かっこいい、憧れちゃいますね」
彼女からの思ってもみなかった言葉。心臓がバクバクと鼓動を始め、頭に血が上る。でも今、俺はそれどころではない……
俺は内股になりながら、階段をカンカンと降り始める。
「ヨコチさん、大丈夫ですか? やっぱりご様子が何かおかしいですよ」
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