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「待たせたな。秘密結社アクーダ!」
崖の上から声が響いた。見上げると、ギラリと光る太陽を背にした人影があった。
「ぐっ。何者!?」
目を細めて常套句を吐き、わたしは破壊活動をやめる。といっても、近くの岩を砕いていただけだが。
「とおっ」
人影は崖の上からジャンプする。途中一回転を決め、見事に着地する。華麗な身のこなしだ。
わたしは驚いたフリをして待つ。
ここから『双剣バクサイガー』への変身プロセスに要する時間・約五秒を稼ぐためだ。
バクサイガーに変身するには、腰ベルトにあるバックルに双剣のキーホルダーを突き刺し、「爆砕変身!」と叫ぶ。すると、虹色の光に包まれ、バイザーのついた仮面に全身黒タイツ、肩や腕、胸や腰、膝や足首に緋色の装甲を纏った正義の戦士が現れる。
しかし、五秒以上たっても、そのバクサイガーはぜんぜん出てこなかった。
変身前の姿である、小林勇斗が代わりに佇んでいる。高校二年生の十七歳だ。
「なにやってんの。さっさと変身しなさいよ」
わたしは我慢しきれず、彼に文句をつけた。
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