正義の時給980円、悪の時給1200円

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「これで少しは寒くなくなるだろ」  ニカッと笑う小林。  くそっ。イケメン気どりか。鼻にティッシュ突っこんでたらサマにならないだろ。 「敵に情けをかけるなんて、コンプライアンス違反じゃないの」 「つまんねえこと気にすんな。変身アイテムを紛失した時点で、始末書もんだよ。……いや、クビかな。はは」 「笑えないわよ」  わたしは立ちあがり、小林と向きあう。 「ん? どうした」 「……ありがと。これ」  まだほんのり温かいジャンパーに腕をとおす。照れくささのあまり体が熱くなった。 「お、おう」  小林は人さし指で頬をかきながら、そっぽを向く。どうやら彼もわたしと同じらしかった。 「ところで、これからどうするの?」  いかんいかん。おかしな展開になってしまう前に、わたしは話題を変えた。 「え。ああ、そうだな」  小林は少し考えてから、 「たぶんクビだろうし、新しいバイトを探すよ」  あっけらかんと言った。
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