11人が本棚に入れています
本棚に追加
「これで少しは寒くなくなるだろ」
ニカッと笑う小林。
くそっ。イケメン気どりか。鼻にティッシュ突っこんでたらサマにならないだろ。
「敵に情けをかけるなんて、コンプライアンス違反じゃないの」
「つまんねえこと気にすんな。変身アイテムを紛失した時点で、始末書もんだよ。……いや、クビかな。はは」
「笑えないわよ」
わたしは立ちあがり、小林と向きあう。
「ん? どうした」
「……ありがと。これ」
まだほんのり温かいジャンパーに腕をとおす。照れくささのあまり体が熱くなった。
「お、おう」
小林は人さし指で頬をかきながら、そっぽを向く。どうやら彼もわたしと同じらしかった。
「ところで、これからどうするの?」
いかんいかん。おかしな展開になってしまう前に、わたしは話題を変えた。
「え。ああ、そうだな」
小林は少し考えてから、
「たぶんクビだろうし、新しいバイトを探すよ」
あっけらかんと言った。
最初のコメントを投稿しよう!