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ただ、その表情は少しばかり寂しそうであった。まだヒーローに未練があるのかもしれない。
「じゃあさ、秘密結社アクーダでバイトしない?」
わたしの提案に、小林は泡を食った。
「冗談よせ。元ヒーローが悪の秘密結社でバイトだなんて」
「でも、時給いいんだよ。1200円だし。ヒーローを倒せたら手当もつくし。こんな魅力的なバイトなかなかないと思うな」
ただし、このビキニアーマーは嫌だけど。
「嘘だろ!?」
わたしの言葉で、小林の目の色が変わる。
「オレのところは、時給980円だぞ。しかも、ヒーローなら悪を倒せて当然だから手当なんてない。交通費も出ない」
はあー、と小林が大きな溜息を吐く。よほどショックらしい。
しばしの沈黙が流れる。
「よし決めた。立花、秘密結社アクーダを紹介してくれ。オレもそこでバイトするよ」
小林がわたしの手をぎゅっと握る。
そんな彼にわたしは待ってましたとばかりに、意地悪な質問をしてやった。
「正義の心はなくしてないんじゃなかったの?」
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