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「君、部屋が見たいんじゃないのか」
「えっ、あっ、はい。そうです!」
「早く言いなさい」
「さっきから言ってましたよ~」
「ほら、こっち、こっち、こっち」
大家さんが三回手招きをする。
確か、地元のクリーニング屋のカウンターに、福島の赤べこみたいに手だけをユラユラと揺らす招き猫があったな――。
そうそう。あの招き猫みたい。
どこか人間離れしてるからか。
それから大家さんは、足早に建物の奥へと歩き出した。その後ろを、俺もヒョコヒョコとついて行く。
「この建物って、50年間で一度も改修工事をしていないんですか」
「どう思う?」
「次はクイズですか」
「①5年前に改修した。②10年前に改修した。③20年前に改修した。さぁ、どれだ」
「おおっ、しかも三択。あっ、また三択だ! 『三択ミノ』ですか」
「なんだ。三択ミノって」
「もう覚えてない~。三択ミノの命短し!」
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