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「ほら、君はどれが答えだと思う」
「えっと⋯⋯最近改修したとは思えないくらい古くなっているし、確か、耐震基準が変わったとかいう話は聞いたことがあるので、③番で」
「ファイナルアンサー?」
「その番組、知ってるんですか」
「一回言ってみたかったんだよ、誰かに」
「いや、絶対に何度も言ってますよね」
「ファイナルアンサー?」
「⋯⋯ファイナルアンサー」
大家さんが足を止め、俺をじっと見つめる。
あの番組の司会者さながら。
俺もゴクリと唾を飲み込む。
「残念」
「ええー。じゃあ、何番なんですか」
「ここには無い」
「ふぇっ」
本日二度目の「ふえっ」が出た。
どんな問題だよ。
ただ、「ファイナルアンサー?」が言いたかっただけだな。
その時、ポケットに入れておいたスマートフォンが、ひっそりと静まるアパート前で、激しく自己主張をするように音を立てる。
画面には「03」からの知らない番号。
恐る恐る、通話ボタンを押す。
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