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建物は2階建て、ワンルームが8部屋。
他の部屋は埋まっているのだろうか。
辺りはひっそりとしていて人気がない。
廃墟とまではいかないけれど、そのギリッギリのラインをいく、くたびれた外観。
ひび割れの目立つ外壁に、ツタが這い上がって行くかのように不気味に絡みつく。
「ワシと同じで古いだろ。50年だからな」
「えっ。この建物、築45年って書いてありますよ。ほら、この不動産屋からもらったチラシに。それが本当なら、文書の偽装ですよね」
「君は短所の思想の人か」
「ふぇっ」
とっさに、変な声が出た。
自分でも聞いたことがないような。
短所の思想を持つ奴って、どんなだよ。
「ええっと⋯⋯」
「まだまだ君は若いんだから、社会に出て多くの人と関わるようになれば、考えも思想も様変わりするからな。心配することはない」
「はぁ⋯⋯」
たぶん、聞き間違い――だろうな。
まぁ、この年齢だ。
耳が聞こえづらくなっていても仕方ない。
間違いをわざわざ訂正するのも悪いから、スルーして話を進めるか――。
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