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アパートの隣には、古いベンチと滑り台だけの、猫の額ほどの公園があった。
夜風に当たりたい時はちょうどいい。
部屋から緑が見えるってのもいいな。
プラス1点で、7点。悪くない。
ただひとつ残念なことに、その公園の真ん中に立つ大木の枝葉が、アパートに深い影を作っている。まだ15時だっていうのに、そこだけまるで闇夜。もはや、小宇宙だ。
だがそのお陰で、カーテンを用意する必要がないから、プラマイゼロ。
「ずいぶんと暗いですね。部屋の中はジメッとしているんですか。カビの温床は嫌ですね」
「ワシはサビの山椒なんて、食べたことがないから分からんな。それは美味しいのかい」
「いや、知らないですよ。ちなみにうなぎにも山椒はかけない派ですけど」
「そうか。うさぎはパンチョって名前かい」
「うなぎがうさぎってところまでは分かる。でもなぜ、山椒がパンチョ。しかも、どんなネーミングセンス」
しまった――。
条件反射のように反応が出た。
それにしても聞き間違えが独特すぎる。
無事に内覧できるのか。
とりあえず、カビの生えやすい部屋は嫌だから、マイナス2点でトータル5点に戻る。
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