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まだ夜明けを迎えておらず、風も収まっていない頃、突如として出現した巨大な獣に、人々は翻弄され、蹂躙されていた。
獣は何頭も存在し、毛色こそ個体によって違いが見受けられたものの、そのほとんどが奇妙な黄金色の瞳を有していた。
そんな獣たちを従えている、唯一深紅の瞳を持つ黒い獣が先陣を切り、人間を見つけるや否や、その牙を剥く。
獣に噛みつかれた人間は、何故かその姿を獣に変え、次々と数が増えていく。
そして、自分が受けた仕打ちを、他の人間にも味わわせていく。
中には牙の餌食になっても獣に変貌せずに済んだ人間がいたが、その人間は頭か心臓を激しく損傷し、即死したからこそ、獣に成り下がらなかっただけだ。
群れを成した獣たちは、人間の集落を襲撃しては、ある方向へと突き進んでいった。
そこは、この国――バスカヴィル国で最も多くの人間が暮らしている、王都だ。
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