Chapter2. 『願いの代償』

4/17
前へ
/98ページ
次へ
夜明けと共に、嵐は過ぎ去った。 でも、自然災害ではない脅威が、今まさに王都を襲っていた。 突然の巨大な獣の群れの襲来に、王都の民は混乱を極め、逃げ惑っていた。 ここに至るまで、獣の襲撃を伝えられる人間は存在しなかったため、獣が王都に侵攻するまで、王都の人間はその存在を知る由がなかったのだ。 ようやく状況を把握することができた国王は、すぐさま王立騎士団と、神殿で管理している巫女に獣の討伐を命じ、現場に派遣した。 戦闘の訓練を受けている騎士と、結界というこの世界で最大の防壁を創り出すことができる、巫女が駆けつければ、この異常事態を収束できると、誰もが信じて疑わなかった。 だが、獣の大群は騎士の攻撃を物ともしない上、どうしてか結界も効かない。 にわかには信じ難い事態に陥った巫女たちは、咄嗟に機転を利かせ、フォルスの使い方を変えてみたものの、それでも獣には通用しない。 そうこうしているうちに、騎士や巫女も獣の餌食となり、ある者は獣の仲間に加わり、ある者はその場で命を落とした。 何故か、巫女は誰一人として獣に変貌しなかった代わりに、全員が苦しみながら死に絶えた。 その姿は、さながら毒を盛られた人間の末路のようだった。 王都に侵入した獣たちは、そこに住まう人々を犠牲にしつつ、ある場所を目指す。 獣たちの――いや、漆黒の体毛と赤い瞳を持つ、原初の獣の目的地は、フローラとヴィンスが再会を果たし、共に過ごした場所である神殿だった。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加