22人が本棚に入れています
本棚に追加
夜明けと共に、嵐は過ぎ去った。
でも、自然災害ではない脅威が、今まさに王都を襲っていた。
突然の巨大な獣の群れの襲来に、王都の民は混乱を極め、逃げ惑っていた。
ここに至るまで、獣の襲撃を伝えられる人間は存在しなかったため、獣が王都に侵攻するまで、王都の人間はその存在を知る由がなかったのだ。
ようやく状況を把握することができた国王は、すぐさま王立騎士団と、神殿で管理している巫女に獣の討伐を命じ、現場に派遣した。
戦闘の訓練を受けている騎士と、結界というこの世界で最大の防壁を創り出すことができる、巫女が駆けつければ、この異常事態を収束できると、誰もが信じて疑わなかった。
だが、獣の大群は騎士の攻撃を物ともしない上、どうしてか結界も効かない。
にわかには信じ難い事態に陥った巫女たちは、咄嗟に機転を利かせ、フォルスの使い方を変えてみたものの、それでも獣には通用しない。
そうこうしているうちに、騎士や巫女も獣の餌食となり、ある者は獣の仲間に加わり、ある者はその場で命を落とした。
何故か、巫女は誰一人として獣に変貌しなかった代わりに、全員が苦しみながら死に絶えた。
その姿は、さながら毒を盛られた人間の末路のようだった。
王都に侵入した獣たちは、そこに住まう人々を犠牲にしつつ、ある場所を目指す。
獣たちの――いや、漆黒の体毛と赤い瞳を持つ、原初の獣の目的地は、フローラとヴィンスが再会を果たし、共に過ごした場所である神殿だった。
最初のコメントを投稿しよう!