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グラスに麦茶を注いでテーブルに運んだ。
お酢と辛子もスタンバイオッケー。
向かい合って手を合わせた。
「いただきます!」
箸をつけるとフワリと温かな湯気が上る。
フーっと冷まして口に入れるとカリっとした麺ととろりとしたあんがうまい具合に絡まった。
「うまい!」
「ね、美味しい」
想像以上の出来栄えに2人で目をわせた。
あんなに乱雑な切り方をされた具材もいい感じに混ざり合っている。スタートの混沌からは考えられないほど上出来だ。
「料理って難しいけど楽しいな」
涼は自分で作った料理を口に運びながら満足そうにつぶやいた。
「どうしても一人だとめんどくさいし、買えば早いし美味しいし……苦手意識があったけど作ってみればそうでもなかった」
「慣れればもっと手際も良くなるしな」
そのうちアレンジもきくようになる。
俺は自炊が苦ではないから簡単なものならすぐに作ってしまうけど、最初はそれなりに大変だった気もする。
「また作ってもいい?」
ためらうように涼が言った。
「作ったら食べてくれる?」
当然! 当たり前じゃないか。
「作ってくれるの?」
「お前が美味しそうに食べてくれるならがんばれそう」
「そっか、絶対食べる。作ってくれ」
そう答えると涼は嬉しそうにフワリと笑った。天使のような笑顔に再び胸がギュンっと鳴る。
こうなったら一生作ってくれ!
食べ終わるころにはお腹もふくれ満足な息が漏れた。
「マジで美味しかった! ありがとうな」
涼はコクリと頷き、少し迷った後に隣に滑り込んできた。
ピタリと身体を合わせて腕を組む。
「おれはいろんなことに不慣れだけど、お前がそばにいて教えてくれたら何でもできそうな気がする」
「涼くん……」
だから、と恥ずかしそうに続けた。
「今日泊って行ってもいい?」
それって。そういうことでいいの?
俺の心臓はバクバクと忙しなく鳴って、可愛い恋人を抱きしめた。
「うん、いいよ、っていうか泊まっていけ」
二人の初めてをたくさん超えていこう。
fin
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