ふたりの初めて

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 動画を参考にした料理はその後、着々と完成に向かった。  すべてを炒め終わったところで「あ!」っと絶望の声が聞こえるまでは。 「今度はどうした!」  見るとほぼ完成された炒め物の横に、手つかずの麺がおいてある。  ああ、と俺は笑いをこぼした。 「麺は別に焼かなきゃいけないからな」 「どうしよう、二個もできると思えない」  一つにかかりきりで手いっぱい。  麺の存在を忘れていたのか。  俺は手を洗うとエプロンをつけて隣に並んだ。 「じゃあこっから共同作業にしよう。っていっても、俺は麺を焼くだけだからあとは任せたぞ」  もう一つのフライパンを出して、麺をならして焼きつける。コツはあまり弄らない事。じっと焼き色がつくのを待つ。  涼は困惑していたけど、「わかった」と頷いた。 「そっちは頼んだ」 「おう」  涼には悪いけど、こうやって一緒に何か作るっていうのもすごく楽しくていいなって思ってる。  初めての共同作業。パパパパーンとおめでたい曲が頭の中に流れた。  狭いキッチンに並んで立つと、腕がすぐに触れ合って距離がぐっと近くなる。 「涼」  突然の呼び捨てに涼は驚いたようにこっちを見た。至近距離で目が合う。たまらなくて唇に触れた。  プニっと柔らかい感触が触れて、離れる。  涼はまん丸の目をむけたまま固まった。 「なんか楽しくていいな」 「えっ、今っ、ええっ」  どっと耳まで赤くなる涼に俺は柔らかく笑う。 「お手伝い賃な」 「でも、だって、おい!」  涼はグっと俺の胸倉をつかんだ。 「初チュウをこんな簡単に済ませんな!」  
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