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初チュウ!
うわ、待って、なにそのフレーズ。ときめくわー。
驚く俺に尚も食ってかかる。
「おれの! ファーストキス!!」
「ええ!」
驚くのはこっちの番だった。
ちょっと待って。その綺麗なビジュアルでファーストキスってパワーワードすぎない。っていうか、え、そうなの、嘘でしょ。待って。
料理どころじゃない。
俺は慌てて火を止めると涼の腕を掴んだ。
「マジ?」
「うるさいな、笑いたきゃ笑え!」
「いや、ちょっと、グっときた」
胸が痛い。
愛おしさでめまいがする。
「ごめんなさい。知らなくて……ああ、やばいな。取り返しつかないわ」
涼はフイっと手を離すと再びフライパンに向き合った。
「いいんだけど! どっちみちお前と進むんだなって思ってたし。料理の途中っていうのは想定外だけど、でも、いい」
その横顔の凛とした美しさよ。
なあ、今決めた。
絶対100%お前の事幸せにするな。
絶対絶対、するな。
俺もフライパンに火をつけて麺を焼くことに専念した。
涼がいろんな初めてを俺にくれようとしている。
そのことに何を返していけばいいのかわからないけど、せめて美味しい麵にする。お前の努力を裏切らないカリッカリの麺に仕上げる。
涼はとうとう最後の段階にたどり着いた。
水溶き片栗粉をそっと流しいれ、とろみをつける。グルグルとかき混ぜてダマにならないよう細心の注意を払っている。
「完成……!」
「こっちもいい具合に焼けたぞ」
広いお皿に麺を乗せてあんをかけるとジュワっといい音がした。香ばしい香りが部屋中に広がる。
それは立派なあんかけ焼きそばだった。
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