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極道とウサギの甘いその後4−21
寝室に入ると、まだ眠るのには早い時間だが、布団が敷かれている。
酒を飲んでいただけではあったもののやはり緊張していたのか、ほっとしてありがたくそこに座った。
竜次郎もスーツのジャケットをおざなりにハンガーにかけて、隣に腰を下ろす。
事務所に戻らずそばにいてくれるようだ。
気遣いを申し訳なく思いながらも、やはり嬉しくて、甘えてよりかかった。
「竜次郎、夜ご飯食べた?」
「ちょい前だが適当に軽くな。お前は?」
「ん……俺はお酒でお腹一杯……」
「まあ、そりゃそうか。けどなんか腹にいれながら飲まねえと体に悪い…ってのがお前にも当てはまるかどうかはよくわかんねえが」
それは一応知っているが、なにか食べていたらもっと早くに満腹になって負けていたかもしれないので今回は致し方ない。
あとは習慣として、接客中、客が頼んだり勧めたりしなければキャストが勝手に食べ物をオーダーしたりはできないので、飲むだけになることが多い……というのもあるだろうか。
過度な飲酒は体に良くない、という認識は当然あるが、自分自身でそれを実感できないので、危機感は下戸の人よりも遠いかもしれない。
「南野さんはちゃんと食べながら飲んでたよ」
自分はともかく南野は大丈夫だと伝えると、竜次郎は何故かものすごく脱力した。
「…………ったく、無茶しやがって。相手は年寄りでもヤクザなんだ。まともに勝負しない可能性だってあったんだぞ」
「俺も一応相手は見てるよ。博徒の人だから勝負は好きだと思ったし、俺に対しては、絶対に勝てる相手だって油断があったと思うから」
手の内を話すと、竜次郎は「意外と策士だな」と楽しげに笑う。
不意にすいと伸びてきた手に後頭部を掬われ、吐息が触れそうなほど引き寄せられた。
「これ以上俺を惚れさせるなよ」
至近で囁いた唇に唇を塞がれて、湊は無防備に目を閉じた。
力強い腕にぎゅっと抱き締められると、ほっとして素直な吐息がこぼれる。
「ん……」
口付けはあまり深くはならず、すぐにちゅっと音を立てて顔が離れた。
不思議に思い目を開けると、熱のこもった瞳にぶつかる。
続きが欲しくて、顔を寄せようとしたのだが。
「さ、疲れてるだろうからお前はもう寝ろ」
ぽすんと布団に転がされて、思いもしない展開に目を丸くする。
「え………?竜次郎、しないの?」
「昨夜も朝もしただろ」
「もしかして疲れてるの……?」
ここでやめるなんて、あまりないことだ。
もしかして町内を全力疾走したり南野を二階まで運んだりしたせいでとても疲れているのだろうか。
「お前がな。俺は元気だ」
なんと、心配されていたのは自分だったらしい。
湊は起き上がると、竜次郎の首に腕を回し、自分からキスをした。
「…どうした?」
あまりしない(自分からする前にされてしまうので)ことだからか、竜次郎は驚いた顔で覗き込んでくる。
「我慢されたら困るから頑張って誘惑してるところ…」
宥めるように背中を撫でられ、そういう気分にさせられなかったかと少し残念に思いながら、素直に意図を告げた。
竜次郎は低く呻くと、「お前な」と湊の肩口に沈んだ。
「煽るなっていつもいってるだろ。別に泥酔してなくても、狂戦士化することもあるんだからな」
男は怖いんだぞ、と父親のようなことを言われて、一応自分も男なのだがと内心ツッコミを入れつつ、湊も考える。
「もしも…乱暴にされたりしても、竜次郎がしたいと思ったことなら、…俺は平気だと思う」
先日怖いと思ってしまったのは、竜次郎が酔っぱらっていて湊をほとんど認識していなかったからだ。
それも突然だったからで、次からは同じことがあっても大丈夫だと思う。…恐らく。
「あー……、まあ、なんとなく何を言いたいのかはわかった。けど、お前が楽しくないことは俺も楽しくねえから、そこは……お互いに気を付けるってことにするぞ」
「う…ん…、でも、俺竜次郎のスイッチはよくわからない……」
「………とにかく気を付けろ」
顔を上げた竜次郎は、複雑な表情で念を押した。
湊も素直に頷く。
「…じゃあ、続きする?」
「お前は平気か?」
「俺も元気」
竜次郎は口の中で「お前な」とか「自衛しろ」とかもごもご言っていたが、欲望に負けたらしく湊の着ているものに手をかけた。
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