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 身を隠せそうな場所に向かっているということは、もしや狙われている気配でも察知したのかと身構え始めていたところだっただけに、予想外の事態で思考が停止した。  こじ開けるようにして舌が差し入れられて、水音を立てながら口内をじっくりと貪られれば、ぞくりと背筋が慄き、身体が熱くなってしまう。  条件反射のようにより深く受け入れようとして……夕日がきらめかせる水面が目に入り、ここが外だという現実を思い出すと正気が戻った。 「っあ……、りゅ、竜次郎、こん、な、ところで、……っだめ……!」  隣の県へと伸びる橋は大きく、その影になった場所は草も高いので薄暗くなってきた今は見えづらいかもしれないが、逆にこんなところに人がいたら怪しい気がするし、遮るものもないので声などは聞こえてしまうわけで、流石に許容できないと背中を叩いて訴えるものの、竜次郎はやめるどころかその場に湊を押し倒した。 「ちょ、ちょっと、竜次郎…っ」  逃れようと身じろぎすれば、耳元で草がガサガサ音を立てて、シチュエーションと黙ったままの男に危機感と不安を煽られる。  待って、と言いかけた唇を、体重をかけて動きを封じられた上で咬み付くように塞がれて、そんな飢えた動作に頭が痺れた。 「っ……やっぱ、我慢できねえ」 「え………?」  不意に唇が離れると、何かを堪えるような声音が落ちてきて、霞む頭のまま聞き返す。  表情が影になって見えないのが少し不安で、震える手で背中に縋ると、パーカーの胸元に覗く首筋に噛みつかれ、ビクッとして顎を逸らせば、晒した場所を舐めあげられる。  いつもと違う草と土と水の匂いが、見られるかもしれないという緊張が、興奮を煽って息が上がった。 「や……あ、だ、め……」  パーカーの中に潜り込んだ大きな手がぞろりと胸を撫でて、既に尖ってしまっている場所をカリ、とひっかく。  駄目だとは言いながらも、湊は抵抗らしい抵抗もせずにその身を差し出してしまっていた。    もう片方の手は太腿を這いあがって中心へと辿り着く。  布地越しにきゅっと握られると、既に反応しかけていたそこに身体中の血が集まって、もう許して欲しいと涙目で覆いかぶさる男を見上げた。 「りゅうじろ……っきゅうに、こんな……、ど、して……?」  辺りに人の気配はなく、赤くなった空は徐々に深い色へと変わってきている。  だからといって人払いをしているわけでもなく、注意深く見れば何をしているかは一目瞭然で、下手をすれば通報されかねない。  そういう事態は、自分はともかく竜次郎にとっては喜ばしくないのでは……そう、相手を心配しての問いだったのだが。  見下ろす竜次郎は、一瞬息を呑んで動きを止めたかと思うと。 「お前が、煽るような顔ばっかすんのが悪い」  表情を歪め、乱暴なくらいに唇を奪ってきた。  押し戻そうとしたのか縋ろうとしたのか、突き出した手を拘束するようにきつく掴まれ、痛むほど舌を吸われて、怒らせてしまったのかと不安に思う心すらも激しい行為に流されて行く。  湊には、煽るような顔ばかりした覚えなど全くなかったが、求められることは素直に嬉しいことだったし、他ならぬ竜次郎が問題にしないのであれば、それ以上拒否する理由はない。  むしろもめていないで人気のないうちにさっさと済ますべきかという現実的な考えも湧いてくる。  形になっていなかった抵抗をやめたのが伝わったのか、遠慮のない動作でずるっと下着ごとボトムを膝までずり下げられて、体を折りたたまれ性急な指が後ろを探れば、欲望がぐっと重さを増した。 「りゅうじろ……っも、いいから……、して」  焦れる気持ちと焦る気持ちが交錯して、涙でぼやける視界でそう強請る。 「……まだ、入んねえだろ」 「いい、から……っ、竜次郎の、欲し……」  言い終わらないうちに、熱い塊が押し付けられた。  「ごめんな」という謝罪の意味を考える余裕もなく。  男の劣情に引きずられるように、与えられる熱に溺れた。
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