白い悪魔

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白い悪魔

 敷地をぐるりと囲む高い塀。  門を開けて広い庭を通り抜けると、その奥にガレージと白亜の立派な二階建ての家がある。  私は優奈を連れて、家に戻ってきた。 『おかあさん、おかえり』 「ただいま、ブラン」  玄関のドアを開けると、ブランが待っていた。 「真白、その子が……ブラン?」  優奈が驚くのも無理はない。  ブランの口の周りと手足の先は、赤い染みで汚れていた。 「もう、こんなに汚しちゃって。またイタズラでもしたの?」  きっと、ゴミ箱でもあさったのだろう。  朝食で作ったナポリタンのケチャップだ。  夫が残した朝食を私はゴミ箱に捨てていた。  ブランがジッと私の隣を見上げている。 「この人はね、お母さんのお友達だから、怖がらなくても大丈夫だよ」  知らない顔でも隠れないところをみると、優奈が言っていたように、猫好きの人は分かるのかもしれない。  ブランを抱きかかえようとして、そこにあったものに気付いた。 「和樹さん、出張に行っているはずなのに……」  玄関にあったのは、夫の靴だった。  忘れ物でもして、戻ってきたのだろうか? 「和樹さん? いるの?」  家に上がってリビングを見ても、夫の姿はなかった。  玄関ホールに戻ってくると、優奈が階段のほうに目を向けていた。  赤い足跡が、点々と二階へ続いている。  私はブランを抱きかかえたまま、二階に向かった。 「……和樹さん?」
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