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二度の中絶経験があった女性は、結婚後の妊娠も流産していた。
それが先月、元気な赤ちゃんが生まれた。
流産の原因はさまざまで、母体ではなく胎児側に先天性の問題がある場合もあり、時々、そういったことが起こるらしい。
「だから真白も、たまたまだったんだよ。ただ、あの子の場合、ちょっとした一悶着があったけどね」
「一悶着、って?」
その女性は流産したあと、なかなか子供ができなかった。
悩んだあげく、ネットで探した占い師を訪ねたところ、「水子に祟られている」と言われたようだ。
身を清めて祟りを遠ざけるために、祈祷されたペットボトルの水を毎日飲むのをすすめられていた。
「なんだか様子がおかしかったから、問いただしてみたらソレだったの」
一本、三千円もする高額の水に、女性は購入を迷っていたそうで、優奈はそれを止めた。
「そんな……祟り、だなんて」
「あの子、そういうオカルトじみたのを信じるほうだったから、説得するのも苦労したけどね」
二度も生まれてこられなかった私の子は、祟りなんて起こすはずがない。
この次だって、きっと私の元に戻ってきてくれる。
……戻って。
頭の中で、この言葉が何度もこだました。
「あのね、優奈。私、今……猫を飼ってるんだけど」
優奈は猫好きだ。
それに夫と違って、優奈なら信じてくれるかもしれない。
「ネコチャン? いいじゃない」
「それが……」
ブランは、人の言葉が話せる。
それを伝えると、優奈が目を輝かせた。
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