ざわめき

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「何それ! インスタとかに動画をあげたら、バズっちゃんじゃない?」 「なんだか(さら)しものみたいじゃない。それに私、SNSとか……苦手だし」 「ただの自慢だよ、自慢! ウチの子を見て、って感じでさ。教えてあげるから、真白もインスタやりなよ」 「でも……」  優奈に話したかったのは、そんなことじゃない。 「この前、こんなことがあったの」  テレビの歌番組で流れてきた歌に、ブランは『このうた、きらい』と言った。  私が初めて中絶した時と、流産の摘出手術を受ける前に聞いていた歌だった。  芽生えた小さな命を摘み取ろうとした時。  小さな亡き骸に別れを告げようとしていた時。  もしも、過去にブランが、それを聞いていたとしたら?  だとすると、ブランは……。  小さな命は、目に見えない細い糸で受け継がれていたのかもしれない。  二度も聞いた同じ歌は、母親の私と引き離される前兆として、心に深い傷跡を残したはず。  あの時、私はブランに「どこで聞いたの?」と訊こうとした。  だけど、答えを聞くのが急に怖くなって、結局、何も訊けなかった。 「それだけじゃないの。夜になると……」  私と夫が寝ようとすると、決まってブランもベッドに入ってくる。  夫に言われて、しかたなくブランを廊下に出してドアを閉めると、今度はガリガリとドアを引っかきだした。  一度叱ったイタズラは二度とやらないはずだったが、それだけはなぜかやめてくれず、今も夜は一緒に寝ている。  今朝もブランのことで、夫とちょっとした口喧嘩をしてきたばかりだ。 「ブランは、私の子供の……生まれ変わりだと思う。きっと私を独り占めしたくて……」  そうとしか思えなかった。  私にだけ懐いて、片時も離れようとしないのが、何よりの証拠だ。
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