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「ごめんごめん、遅れちゃったー!」
席に着いたココナは、明るい声で三人に話しかける。
三人は談笑をやめて、ココナの方へと振り向く。
「ココナ、遅いの。十五分も遅刻なの」
三人のうちの一人、キーが不満そうな表情で、ココナへと苦情を入れる。
「あははははー。ごめんごめん」
「はあ……。まったく反省してないの……」
が、ココナの返答を見て、表情を不満から諦めへと切り替える。
ここにいる四人は腐れ縁。
十年以上の付き合いがある。
それゆえ、互いの性格は、よく把握していた。
長所も、短所も。
真面目なキーは、ココナの行動に不満を抱いてしまうも、大雑把なココナには伝わらないことも知っている。
毎回毎回、今度こそは伝わるのではないかと注意はするが、結局伝わらないまでがいつもの流れだ。
「まあまあ~。ココナだもの~。仕方ないわよ~」
リンウがのんびりと言う。
「? そうそう、私だから仕方ないー」
深く意味を理解せず、ポケッとした顔でココナが答える。
「そうだぜキー! ココナは馬鹿なんだから!」
ナズナが店中に響く大声で言う。
「そうそう、私馬鹿だから……私馬鹿じゃないよ!?」
断固抗議すると言わんばかりに、ココナが叫び返す。
直後、ナズナとココナの大声で、喫茶店の客の視線が一斉にココナたちの席に向く。
「お客様、店内での大声はお控えください」
そのうえ、速足でやってきたマスターじきじきの注意付きだ。
「おう! すまん!」
ナズナが再び、店中に響く大声で言う。
「わわわ……。申し訳ないのです。静かにさせますので……」
キーが焦ってナズナの口を塞ぎ、マスターにペコペコと頭を下げる。
マスターは、心配そうではあったが、キーの態度に免じて目を瞑った。
お願いしますよ、と一言残して、ココナたちの席から立ち去る。
マスターが立ち去ったのを見て、客の視線もココナたちの席から離れる。
「マスター! レモンティーお願いします!」
ココナは気にしない様子で、席から立ち去っている途中のマスターの背中に、遠慮なく注文を投げかける。
マスターは立ち止まり、ココナの方へと振り向く。
「…………かしこまりました」
そして、ポケットから取り出した注文票にレモンティーと書き、喫茶店の奥へと入っていった。
「うーん、あのタイミングでの注文……さすがココナなの」
「へ? なにが?」
ココナの興味は既にマスターになく、レモンティーが届いたタイミングでデザートを頼もうと、メニューを眺めていた。
ショートケーキ。
チーズケーキ。
モンブラン。
並ぶ文字に、ココナは目を輝かせる。
どれにしようかと視線をメニューの上から下まで三往復させ、パッと顔をあげる。
「皆は、もうデザート頼んだ?」
「……まだなの」
「はいこれ! 私、もう決めたから!」
その後、メニューをキーたちの方へと差し出す。
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