01日目 ココナとキーの場合

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 時間は十四時。  集合時間。    ココナとキーは、残りの二人を待っていた。   「リンウとナズナ、来ないの」   「まったくー。約束の時間を守らないなんて、けしからぬー。これはたっぷりお仕置きが必要ねー」   「その場合、ココナに今まで遅れた分、百回以上のお仕置きもしなきゃなの」   「失敗を許してこその、友達! 私たち四人、エターナルフレンドフォーエバー!」   「はあ……。調子のいいことばっか言ってるの。あ」    テーブルの上に置いておいたスマホが震え、通知のランプが点灯する。  スマホには、SNSに届いたメッセージが、ぴょこっと顔をのぞかせていた。  送り主はリンウだ。   『キー、ごめんなさい~。なんか事故があったらしくて~、電車が少し遅れてるの~。お店への到着、十五分ほど遅れそう~。ナズナも一緒~』   『了解なの。気をつけて来るの』   『一人で待たせることになっちゃって、本当にごめんなさいね~』    状況を理解したキーは、リンウへのメッセージを返した後、スマホを再びテーブルの上に置く。   「ココナ、リンウたち、十五分ほど遅れるそうなの」   「いや、うん。それは私も見たから知ってるけど、キーを一人で待たせる? あれ、私いないことになってる? いるよいるよ?」   「いつも遅れるから、しかたないの」   「ぐぬぬ」    ココナは少しの間、不服そうな表情をしていたが、すぐにいつもの表情に戻った。  ココナは大雑把な性格。  細かいことは、すぐに忘れて機嫌が直る。  キー、リンウ、ナズナからは、敬意をこめてアホの子と呼ばれることもある。   「ま、二人は遅れて来るみたいだし、私たち二人で先にやっちゃおうか。共・有・会!」    ココナはスマホを取り出して、画面をキーへと見せる。  スマホの画面には、マッチングアプリが表示されていた。    マッチングアプリとは、スマホ一つあればできる、オンライン恋愛サービスである。  目的は、恋人探し、結婚相手探し、一夜限りの相手探し、などと多岐にわたる。  プロフィールを入力した後、他のマッチングアプリ登録ユーザーの情報を確認し、興味がある相手に“いいね”マークでアピールをする。  相手がアピールを受ければ、マッチング成立。  めでたくメッセージのやり取りが開始され、相手と親交を深めていくことができるサービスだ。    マッチングアプリは、妖怪たちの中でも、人間と会う最もコスパの良い方法として広まっている。  今日の四人の目的は、マッチングアプリの状況共有会だ。   「それでは! 私の結果を発表します!」    ココナは勢い良く立ち上がる。  キーはそれを見てあたふたとするが、他に客のいない喫茶店と、マスターの諦めたような表情を見て、そのままココナを見るにとどめた。   「ドルルルルルルル……!」   「あ、そこは自分で言うんだね……」   「ジャン! 結果はああああああ……ドルルルルルルル……」   「長い。長いの」   「デン! マッチング……0人ーー!!」    ココナは崩れ落ちた。  糸が切れた操り人形のように椅子へと座り、上半身を勢いよくテーブルに伏した。  テーブルが勢いよく揺れて、ココナの注文したレモンティーのカップが倒れ、レモンティーがテーブルへと流れ出る。  ココナの顔とテーブルの距離は、0。  レモンティーがテーブルの上を流れ、ココナの方へと向かう。   「あ」   「ん?……うあっちゃあああああ!?」    キーの言葉も遅すぎた。  いれたて熱々のレモンティーは、ココナの顔に辿りつき、熱を伝える。  ココアはレモンティーの熱さに、反射的に状態を起こし、その勢いのまま椅子ごと後ろへスッ転んだ。   「いたあああああい!?」   「お客様、大丈夫ですか!?」    キーは、数枚の濡れタオルを持って走ってきたマスターの心の広さに、心の中で土下座しつつ、タオルを一枚受け取って目の前のトラブル退治にかかった。
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