最初から最後まで

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最初から最後まで

僕には3歳年上の彼氏がいる。あの日、通勤電車で声をかけられた。 『ね、君。今夜食事に行かない?』 「え?いや…結構です」 誰だ?知り合いか?取引先の人? いや…こんなイケメンなら絶対忘れない。 でもどっかで…???? 『あ…って、急に言われても不審者だよな。ごめん…俺、こうゆう者デス…』 そのイケメンはオロオロしながら、なぜかカタコトになる…えー…カワイイ… 「ぷっ」 『びっくりさせて、ごめんね』 「いえ…」 俺は答えながら、名刺を見つめる。 「同じビル…」 『ああ、そうだ』 「そうだって…僕の事知ってたんですか?」 『うん、ここで毎朝会って会社まで後ろ歩いて…一緒にエレベーター乗って、喫煙所も』 「あぁ…そっか、地下の喫煙所だ」 うちのビルは地下鉄と直結してるから、たくさんの人が喫煙所に寄る。 『俺の事、知っててくれたの?』 「いや…見覚えはあります」 『琢磨、三谷琢磨』 イケメンが俺の持った名刺を突く。 「三谷サン…」 『ん』 そのイケメン三谷サンは、返事をしながら手を差し出す。 『君の名刺…くれないの?』 「ああ…すみません…僕はこうゆう…モノ…デス…」 なぜか僕もカタコトになる。 『ありがとうございます』 イケメン三谷サンは、丁寧に両手で受け取った。 うわぁ…仕事バリバリにできる人だわ… 「……」 『蒼太、片桐蒼太くん』 「はい」 『で?蒼太くん返事は?』 「返事って?」 僕は、いつの間にか到着していた喫煙所のドアの前でポカンとする。 『ひどいな…今夜食事にって誘ったよ?』 「あ…」 『怪しい者じゃなかっただろ?』 「ええ、まぁ…」 僕たちはタバコに火を点けながら、会話を続ける。 「でも、三谷サン…ストーカーじゃ?」 『ははっ、そう来たか。じゃあ、俺も脅すよ?』 イケメン三谷がニヤリと笑う。 あ…その顔…その悪い顔、好き。 『…どう考えても、俺の方が年上だ。と言うことは、俺の朝のルーティンに入り込んで来たのは?』 「えー…僕?」 『責任取ってくれな、今夜8時ここで待ってる。君が来るまで…じゃな』 イケメン三谷は手を振って…颯爽と…去って行った…
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