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「琢磨さんって…意地悪…」
『ごめんごめん、もう言わないから嫌いにならないで?』
イケメンが背をかがめて俺の顔を覗き込む。
やっぱカワイイな。
「はい、嫌いになんてなりません…むしろ…」
『うん、むしろ?』
ほらまた、その悪い顔…
「知りません、言いません」
『まったく…蒼太くんは秘密が多いな。昨夜言ってた身体の秘密ってさ…本当に誰も知らないの?』
「はい…いつか、自分から話したいと思える人と会うまでは」
『ふうん…』
またいつの間にか喫煙所に着いていた。
『じゃまたね』
「はい」
それから何度かそんな出勤時間を過ごし、金曜日…
『おはよう、蒼太くん』
「おはようございます」
『今夜…食事どうかな?』
「ん、いいですよ。ってか琢磨さんみたいな人が金曜日の夜に僕と食事なんて勿体無いですよ」
『いや?』
「僕は楽しみですけど…」
『じゃあ、今夜』
いつもの朝、いつもの喫煙所でいつものタバコ…いつものエレベーター…今ココ
「ヤダ!三谷くんおはよう♡朝イチ王子様に会えるなんて運命かも〜」
お…おうじ?
『丸川さん、おはようございます。王子様はやめてくださいって』
「ねぇ、三谷くん。今夜こそ飲みに行こう?二人でぇ」
『……』
甘えた声…エレベーターという密室の中、僕は他人のフリして黙っていた。
「ねぇってば、三谷くん」
『丸川さん、すみません。今夜は大事な先約があって…』
「え〜彼女いないんでしょ?」
『見つからない彼女より大事な人なんです』
カァ…って何で僕が赤くなるんだ。こんなの断る為の口実だろ?
琢磨さんが僕の手の平にそっと触れた、こっちを見もせずに。
まるで君の事だよって言ってるみたいに。
僕は琢磨さんの触れた指をギュッと握った。
彼の肩がビクンと跳ねた。
「えー、つまんない。三谷くんツレないんだから、プンプンしちゃう」
勝手にプンプンやってろよ、琢磨さんは今夜は僕と飲みに行くんだから。
「次は絶対、逃がさないからね!」
彼女は事もあろうか、琢磨さんの腕に抱きつくようにその豊満な胸を押しつけた。
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