最初から最後まで

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合コンに行く中西とエレベーターに乗った瞬間固まる。 奥に琢磨さん…俺はペコリと頭を下げエレベーターに乗った。 「なぁ片桐、お前の大事な人って?」 ドクン 「中西、ここじゃ…」 僕はチラリと琢磨さんを見る。その切れ長の目を大きく見開いていた。 「今からその相手と食事なんだろ?」 「ん…まぁな」 あちゃーと思い、再度琢磨さんに視線を移すと真っ赤な顔を片手の掌で覆っていた。 「恋人なのか?」 「クス…いや友人なんだ…今はな…」 「羨ましいな、よし俺も合コン気合い入ったよ」 「頑張れよ、いい報告待ってるよ」 「おう、お前もな。片桐にそんな顔させる相手に会ってみたいよ、いつか紹介しろよ?」 俺は覚悟を決めた。 「中西…俺さ、ゲイなんだよね」 ドサっ 背後にいた琢磨さんの荷物が音を立てた。 中西が驚いて振り返る。 「ふぅん、そうか…別にいいんじゃね」 「ふふ、そうだよ。黙っててごめんな」 「別に…だからか、総務の秋田さん知ってるだろ?」 「ああ…ウチに来るたび女子が騒いでたな。長身のイケメンだろ?」 「あの人が…片桐の事狙ってるって…」 「そうか…だからか。いつもチョコレートくれるんだ」 「気をつけろよ?じゃな!」 僕はそのまま喫煙所まで歩く、背後に彼の靴音を感じながら… タバコに火を付け一息吐く。 続いて琢磨さんも入って来る、誰もいない事を確認して口を開いた。 「お疲れ様です」 『お疲れ様…』 「驚かせてすみませんでした」 『いや…俺こそ、カッコ悪かった。本当なのか?その…蒼太くん、ゲイなの?』 「ええ…中学生で自覚してそれからずっとです…あとはメシ食いながら話しますね」 琢磨さんが連れて行ってくれる店はオシャレで個室だ。 慣れてるんだろうな、ズキリと胸が痛む。 今夜はワインで乾杯をした。 今日の琢磨さんは口数が少ない。 「あの…黙っててすみませんでした」 『……』 「あの…琢磨さん?怒ってますよね?僕…帰ります…」 席を立った瞬間、腕を強く引かれ抱きしめられた。 香るムスクに酔う。 『蒼太くんごめん…我慢できない、ちょっとだけ』 俺もそっと琢磨さんの背中に腕を回した。 二人分の鼓動が静かに響く。
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