響子の言い訳

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「佳子の旦那は一度ならいいとほろ酔いの私と遊んで棄てた。明日香の旦那は好きだ、愛してるって言うけど、自分の都合で呼び出して散々、遊んでおいて明日香にバレそうになったらあっさり棄てた!遊ばれたのは私!邦之にまで話されて慰謝料請求したいのは私の方だわ!」 顔を上げてキッ!と二人を睨んで言うと、響子はまた顔を伏せて泣いた。 ふぅ…と息を吐いて明日香がポツリと言う。 「話してないよ?…‥言えないよ。浮気を知ったらどれだけ辛いか、知ってて言えないよ。山下さん、歳下だけど落ち着いててしっかりされてる。何となく気付いてたよ。私達を不幸にしたくて必死で見えてなかったのは響子だよ。どうして自分が一番大事な人を見てなかったの?」 「……気付いてた?嘘よ!!明日香の言う事なんか信じない!」 「響子の彼氏…山下さん、響子の個人のSNS、見てたよ。教えてなかったんでしょ?山下さんも忙しいし興味もないと思って油断したね。彼女のSNSなら見たいと思うのが普通だよ。離れている時なら余計に…今どうしてるかどう過ごしてるか、知る方法があるなら見るよ。響子、直弥さんの写真は載せてなくても二人でホテル、デート、明日香への匂わせだと思うけど手繋ぎとか載せてたよね。自分はいないホテル、他に相手がいると思って当然だよ。響子は自分で自分の首を絞めてたの。」 佳子が学生時代と変わらない口調で、可愛らしい声で話すと明日香もそれに続いた。 「これ、響子のSNSに載せたホテル夜景のガラス窓をアップにして夜景を薄く加工してもらった物。響子と…直弥が映ってるでしょ。最初に私が気付いて手に入れた証拠。ワイシャツに香水や口紅、気付かせたくて匂わせていたのでしょうから満足でしょ。これ以上、被害者振るの止めてくれる?被害者は佳子と私。慰謝料を払うのは小沼響子、あなたよ。」 言葉も出ずに泣きながら項垂れる響子を見て、佳子は隣にいる好一の方を見てから言う。 「私、夫を許さない、響子も許さない。好一さんと響子にそれぞれ100万ずつ、いいですよね?弁護士さん。」 「勿論です。そちらの弁護士さんも宜しいですね?」 湯浅が聞き返すと響子に小さく耳打ちをし、コクリと青い顔で響子は頷いた。 もう頷く以外、返答も出来そうには見えなかった。 「はい。小沼響子は里中佳子さんへ慰謝料100万をお支払いします。」 弁護士が響子に代わり答えて、妥当です、とでも耳打ちをしたのかなと明日香はその様子を見つめてから言葉を告げる。
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