報い

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今にも別れを言い出されそうで響子は慌てて言葉を出す。 「ねぇ、明日香が…邦之が部屋に入れてくれたって…ホント?嘘だよね?」 『明日香さんのSNSの写真を撮った日の事?』 「そう。明日香と部屋の前で会って入れた。なんで?」 『何で?響子がそれを聞くの?』 ため息が大きく聞こえて、響子はだって!と声を上げる。 『あの日早く帰れたから、約束はしてなかったけどそんな時の為に合鍵をくれたんだよね。好きに部屋で寝てて良いよって。忙しくて遅く帰る事が多いしって。』 「そうだけど!帰ったら連絡くれてもいいじゃない!それに明日香に手を貸して貰う為に渡した鍵じゃない!!」 強く反論すると、強めの言葉が聴こえて来て響子は喉を鳴らした。 『明日香さんはご主人と響子さんを疑ってた。あの日、確かめに行ったんだ。部屋に行って響子さんがいたら自分の考えは間違いで響子さんは…親友は残る。ご主人への疑いは晴れないけど少なくとも親友を疑わなくていい。それを聞いたから部屋に入れたし写真にも協力した。そもそも響子さんがそんな事をしていなければそれも笑い話で終わってる事だよね?響子さんの彼氏の俺と親友の明日香さんのサプライズ、驚いたでしょ、それで終わり。』 本当はあの時点では山下邦之は明日香の目的は知らなかった。 偶然、早く戻り響子の顔を見に行っただけで、部屋を開けたら明日香がいただけの事だったが、今は明日香を守る為に自分が部屋に入れたという事になっている為、山下は考えておいた言葉を言った。 「サプライズ…そんな訳ないでしょ?タチの悪い悪戯じゃない!」 声を荒げると滅多に怒ったとこを見た事もない山下の怖い声が聴こえる。 『誰かを好きになるのは自由だけどな、そこには人として最低限のルールがある。既婚者を好きになるなとは言わない。本気なら親友ならまずは詫びて話すべきだろ。タチの悪い悪戯?それに対して文句を言える立場か?悪戯で済んで感謝するとこだろ。響子さん、あんたがした事はさ、俺や明日香さんを馬鹿にして無意味に傷付ける行為なんだよ。』 初めて聴く声に響子の膝がガクガクし始めた。 泣きそうな目で震える声を出す。 「いや……ごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい。好きじゃない、別に明日香の旦那は好きじゃないの!強引だったし少し付き合うだけならって寂しかったから!邦之、お願い。もう二度しないから私を信じて?」 信じてくれる、必ず信じてくれるはずだと、響子は甘い声を出したが耳に届いたのは冷たい声だった。
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