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 俺がこのコンテストに参加した切っ掛け、ないし人生の目標を見つけたのは12年前の修学旅行だ。高校2年生だった俺は、修学旅行でロンドンの大英博物館に訪れていた。修学旅行でイギリスに行くことが出来たのは、俺の通っていた高校が私学だからだ。当時、円高だったことも大きい(円安なら北海道になっていたそうだ)。  結論から言うと、修学旅行の2日目までは不快でしかなかった。空港で不良のグループがベルトやアクセサリーを外さずに金属探知機のゲートに通って、飛行機に搭乗する時間に遅れたのだ。さらに、教師達から露店で買い物をするなと散々注意されたのに、クラスの嫌われ者が露店で買い物をして店主と揉めて殴られた。極めつけは、恋人同士の同級生達が俺の目の前でイチャイチャする始末。  チッ!  クソがッ!  リア充爆破しろッ!  不良と馬鹿は脳ミソを使えッ!  面倒くせえし、ムカつくし、センコーも説教ばっかで、うるせえのウザいのなんのってッ!  それらのトラブルのせいで自由行動の時間も範囲も制限されたッ!  失意の3日目。ケンブリッジ大学を見学した後、俺達は大英博物館を訪れる。  博物館に訪れて30分。ミイラの写真を撮りまくった後だった(乾いた筋肉とそこから剥き出した骨が気持ち悪くてサイコーだった)。自由行動の時間に館内中を1人で探索している時にそれらと出会う。  首のない布を巻いた装束の女性達と裸体で筋骨隆々の男性の白く掠れた身体が目の前にある。パルテノン神殿のペディメント彫刻の数々だ。乳房の輪郭が浮き上がる女性の彫刻には目もくれずに、男性の彫刻に見とれた。凄まじい表現力だ。前鋸筋(ぜんきょうきん)が浮き上がるほど盛り上がり、大胸筋も三角筋も太さがありながらコンパクトに収まっている。身体の強靭さと美しさが見事に表現出来ているのだ(股間も凄かった)。美術に興味がなくてもそれぐらいのことは無知な俺にも理解出来たし、感動した。古代ローマのアポロ像も見たが、こっちのほうが力強く、逞しい。
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