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「優勝。内藤正介殿。貴殿は本ボディビルコンテストに於いて優秀であったのでこれを賞します。2022年10月1日、マッスルプランナー代表取締役及び全日本ボディビルコンテスト主催者、中山銀司。おめでとう!」
主催者が言い終わると、助手の女性からメダルを首に掛けてもらう。俺が主催者と握手をすると会場から一層の拍手とカメラフラッシュが起こった。
「最高だったぞ!」
「いい筋肉だった!」
「ずっとキレてるよー! 筋肉の国士無双!」
客席から歓声が上がる。
ステージから降りると助手の女性に促されて、インタビューボードが設置されている所に移動した。ボードの前に立つと雑誌やスポーツ新聞の記者がカメラを構えてフラッシュを焚く。助手が、
「それではインタビューを開始させていただきます。各記者の方々には順を追って質問をしていただきたいと思います。恐れ入りますがよろしくお願いします。内藤選手、お疲れさまでした。優勝おめでとうございます。今のお気持ちはいかかでしょうか?」
「そうですね。本当に、筋肉万歳と言うか。今まではどのコンテストや大会でも予選にすら通過しなかったので、単純に嬉しいと言うか─嬉しいです。本当に嬉しいです! それにつきます。審査員の皆さんや応援してくださった観客の方々に感謝です。筋肉万歳です」
俺が答えると、助手が順番に記者に質問をさせる。
折角、「筋肉万歳」というワードを連呼したのに誰も笑わなかった。
「優勝、おめでとうございます。ボディビルダーを目指した切っ掛けは何でしょうか?」
まずは、健康雑誌の女性記者からだった。俺はユーモラスに答える。
「話せば長くなりますね。要点を掻い摘まんで説明すると、まず修学旅行で訪れた大英博物館が切っ掛けです。そこで展示されていた筋骨隆々のギリシアの彫刻像に出会い、筋肉の造形に魅了されたんです。あの衝撃は例えるなら、筋肉のビッグウェーブですね」
「分かりました。ありがとうございます」
女性記者に渾身のワードである「筋肉のビッグウェーブ」が受け流された。次はスポーツ新聞の男性記者の番だ。
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